■クロノス大祭『夜空のクロノス大祭』
クロノスメイズでの冒険が終わった直後、「この後、星を見に行かない?」
ユイがアトラに声をかけた。
「いいですね……ご一緒します♪」
アトラは静かに微笑んで同意する。
「いくら星明りがあっても夜は足元が危険だから、ランプも持っていきましょう」
ユイの言葉にアトラも「そうですね」と頷いた。折角なので先日友人同士で作ったステンドグラスのランプを持って行くことにする。
ユイが『星空が凄く綺麗に見える場所』に案内してくれるというので、大人しく後ろに続き、とある建物の前で足を止めた。
暖かい室内から夜空が綺麗に見える窓でもあるのだろうか、とアトラは少し首を傾げる。
「ここの屋根から見る星空は凄く綺麗よ」
「え……?」
ユイは言いながら自信満々な笑顔で振り向いた。その言葉に少しびっくりするアトラ。まさか屋根の上とは。
星が綺麗に見える場所というと、小高い丘や何もない広い草原などを浮かべるものだが、住宅地でというのは考えもしなかった。
屋根に上って、足元を照らす為のランプを取り出す。こんな寒い中でもステンドグラス越しの淡い光が暖かく感じられた。
2人で腰を下ろし、横にランプを置く。
「はふ……綺麗……。星に手が届きそうです……ね」
宝石箱をひっくり返して大量の宝石を散りばめたような満点の星空。アトラがうっとりしながら溜息を零した。
「星座みえるかなー?」
アトラの反応に満足そうに微笑んだユイも星空を見上げて瞳を輝かせる。
「屋根から星を見ようと誘われてビックリしたけれど……正解です。こんなに近くに星が感じられて♪」
屋根から星を見るだなんて考えもしなかったが、考えてみれば、周りより少し高い建物の屋根の上からなら空も近付き、遮蔽物もない。
「ふふふ、意外と穴場っぽいしねここは……」
ユイは得意げに笑った。ざっと見渡す限り、自分達と同じように屋根から星空鑑賞をしている人影もない。確かに穴場だ。
「おちたら大変だけど」
冗談っぽく付け加えて。
素敵な星空と手作りのランプ。それだけあれば女の子同士の楽しいガールズトークは終わらない。