■クロノス大祭『白と金に包まれし日に』
「少し、外を歩かないか?」マヒロがコレットを誘った。
二人は外に出ると、思わず空を見上げる。
「金色と白のコントラスト、綺麗なの」
「うん、とても……綺麗だね」
はらはらと舞う雪が白く、さらさらと降る砂が輝く。上空では時折風が吹いているのか、ちらちらと雪と砂が光った。それはまるで、雪は白銀のように、砂は黄金のようであった。
降り続ける雪と砂に、コレットはそっと手を出した。掌に、雪の冷たい感触。そして、跡も残らずに消えていく、不思議な金色の砂。溶けた雪の雫の中に、砂がぽとりと落ちると、水の中を泳ぐようにして溶け消えるのであった。
コレットは冷えた両手を擦る。マヒロはそんなコレットの傍に立つと、そっと肩を抱き寄せた。マヒロの広いコートの中で、コレットは微かに目を細めた。
「特別な日に一緒に過ごして下さってありがとうございます」
ふぁさりと、純白の長髪が揺れた。
顔を上げたコレットは、行儀良く姿勢を保ち、じっとマヒロを見つめる。その視線に、思わず顔を俯かせるマヒロ。顔がほんのりと熱くなるのを感じた。
「こちらこそ、一緒に居てくれて……ありがとう」
マヒロが返事をすると、コレットは雪が溶けるように、ほろほろと笑顔になっていく。そして、マヒロの胸の辺りへ、そっと体重を預ける。
マヒロはそんなコレットへ、伝えなければいけない言葉を思い出した。
「あのね……コレット、ずっと……言いたかったんだけど。俺、君のことが……好きだ。愛してるんだ」
つっかえながら、言いきるマヒロ。
心臓が強く脈打ち、コレットがその音を聞いているような気がした。
返事をもらうまでの間が、時間が止まったかのように長く感じる。
コレットが両手を出して、マヒロを振り返る。そして、その小さな腕をマヒロに回してぎゅっと抱きついた。
「私も、大好きなの」
胸の中に顔を埋めながら、もごもごと答えを返したコレット。
その声が聞こえたのか、聞こえなかったのか、マヒロはコレットが抱きついてきたことに驚きと喜びを感じながら、ぎゅっと抱きしめ返すのであった。