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2人でクロノス大祭

玲玲・カラス
紅蒼桜嵐・クロ

■クロノス大祭『Mi fa piacere stare con te.』

 その日の夕暮れは、いつものそれとは違っていた。
 日が落ちていく中、空から降ってきたのは白い雪と金色の砂。
 その二つがあいまって、幻想的な世界を作り上げていく。
 そんな美しい世界となった庭園の一角のベンチに、カラスとクロは腰掛けていた。
 のんびりと、ただ眺めているだけでもよかった。
 だが、カラスはとあることをするために、寄りかかるクロの手をそっと取った。
「……?」
 クロは小首を傾げてカラスを見上げる。
「えぇと、話が、あるんだが、聞いてくれるか」
 そっと握っていたはずの手は、いつの間にか少し力が篭められていた。
 カラスの緊張した面持ちにクロもごくりと固唾を飲む。
「な、なんでしょう……?」
「今すぐには、無理だと思うが……俺がもっと、クロの全部を受け止められるような男になったら……」
 篭められていた力が緩くなったかと思うと、カラスのもう一方の手がクロの手を包み込む。
 クロは視線を手先へと移した。
 自分の左手薬指に、ゆっくりとはめられる光るもの。
「俺と、結婚してくれないか?」
 白薔薇を模った指輪だった。
 突然の告白に、突然のプレゼント。
 そこだけ時間が止まったかのように、クロは石像のように固まり、まったく動く気配がない。
「え……っと、あの……えぇっ、結婚……!?」
 しばらくして、やっと状況を理解できたのだろう、あわあわと口をわななかせ、挙動不審になる。
 そんな彼女を落ち着かせるように、カラスは柔らかな微笑みを浮かべ、自分の両手で指輪をはめた彼女の手を包む。
「クロのことを、世界中の誰よりも大切にする。ずっと好きでいると約束しよう」
 カラスの声は深く、雄雄しく、そして包容力があった。
 その声に、いつも支えられていた。
「だから、俺と一緒に幸せになって、ください」
 その微笑みは、今はクロにしか向けられていない。
 その言葉は、今はクロにしか向けられていない。
 一つ一つをかみ締めるように、クロは目を瞑ってゆっくりと深呼吸をした。
 もう取り乱した心はない。今は落ち着いて、カラスに応えられる。
「ん……ありがとう」
 自分を愛してくれた人へ感謝を。
「じゃぁ、私も約束、する。カラスさんの傍にずっと居るって。ずっと、ずーっと、好きでいるって」
 自分を支えてくれる人へ約束を。
「えと、私で良ければ……喜んで。うん……一緒に、幸せになろう」
 大切な人へ、自分からも告白を。
 今まで、辛いことも悲しいことも、楽しいことも嬉しいことも色々あったが、今クロが浮かべている笑顔が、今までで一番幸せに見え、つられてカラスも微笑み返した。
「……ありがとう、クロ。愛してるぞ。いつまでもずっと一緒だ」
イラストレーター名:七雨詠