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2人でクロノス大祭

白緑・アルトゥール
北天の瞬き・シェダル

■クロノス大祭『Traumerei』

 金の砂混じりの雪が降る夜――。
 時計台の下で肩を寄せ合い、その美しい光景を眺めているのは、アルトゥールとシェダルだ。
「そういえば……、シェダルさんはご存知ですか?」
 アルトゥールに問いかけられ、シェダルは小首を傾げながら彼を見上げる。
「クロノス大祭は、『時計塔の下で、好きな人に告白するお祭り』なのだそうですよ」
 彼の言葉の真意を考えあぐねている様子のシェダルに、アルトゥールは二度目の告白を敢行した。
「シェダルさん、好きですよ」
 これまでアルトゥールは、シェダルの気持ちが育つのを待っていた。けれど、今日ばかりはと、心のうちに留めていた想いを口にする。
 いつもどれほど彼女への想いで胸がいっぱいか――告げるのは、普段口にできない想いの丈ばかりだ。
「本当は、普段からもっと伝えたいのです」
 アルトゥールはふいに顔を雲らせる。
「ですが……あなたが困ってしまうのではないかと思うと伝えられませんでしたし、何より待つと決めていましたので……。……それでも伝えたかった」
 あの日から決して変わらぬ、この気持ちを。
 真剣な表情を浮かべ、アルトゥールはシェダルの目を見つめながら言葉を紡いだ。
「――シェダルさん。あなたを愛しています」
 直後、アルトゥールはふっと表情をゆるめ、困ったような微笑みを浮かべる。
「……こういうお祭りだから、想いを告げても許されるでしょう?」
 シェダルへの愛しさを、アルトゥールはやわらかな表情で告げた。
「アル……」
 頬を赤く染め上げ、シェダルはアルトゥールの言葉と想いを受けとめる。
「好き……大好きだよ、アル」
 ぽつりとこぼれた言葉。
 思い切ったように、シェダルもアルトゥールへの想いを告白する。
「本当はもっと前から答えは出ていたの。でも、どうしてもあなたの優しさに甘えて……逃げてしまって」
 心の奥底に眠っていた本当の想いを、シェダルは静かに言葉にしていった。
「これからもずっとずっとあなたの傍で、あなたの隣にいたい、と思うの……」
 顔を真っ赤にして告げるシェダルに、アルトゥールは微笑みを浮かべる。
「ずっと……私の傍に、隣にいてください」
 アルトゥールの言葉に、シェダルはこくりと頷いた。
「もちろんだよ……。アルも、ずっとボクのそばにいてくれるよね?」
「はい」
 気持ちが通じ合った二人は、互いに顔を見合わせ、照れたような笑みを浮かべる。
 ロマンチックなイルミネーションの中、寄り添い合う影。
「愛しています、シェダル」
「ボクも……愛してる」
 そして音もなく、二つの影は重なるのだった。
イラストレーター名:龍胆