■クロノス大祭『amor aeternus』
空から降り注ぐ真っ白な雪と見るものを魅了する金の砂。また、誰もがこの一夜を楽しみに夜更かしをしているのか、町の明かりも一段と綺麗だった。
全てを一望できるテラスに立って、リュエルは息を飲んだ。
「わぁ、綺麗……」
目を潤ませるリュエルに、フェイテルも満足だった。
「ふふ、気に入って貰えて何よりです……♪」
その時、一陣の風が吹いた。
降り続ける粉雪と金色の砂は、風に吹かれてキラキラと天高くに舞い、空中で混じり合って光の層となる。それはまるで、天に輝く星たちが地上に散りばめられたような、奇跡の夜に相応しい一瞬だった。
風が通り過ぎると、雪と砂は何も無かったようにはらはらと降り続ける。
二人は奇跡のような光景に言葉を失っていた。
「今の見ました？」
「ええ、しっかりと見ました」
リュエルとフェイテルはお互いの目を見合わせて、微笑みあう。
「こんな素敵な場所につれてきていただいて、ありがとうございます……今度、またお誘いしていただけますか？」
「勿論……喜んで……」
そして、そっと寄り添うのであった。
見下ろす街並みの中では、人々が歌い騒ぎ、或いは二人と同じように、静かに寄り添って特別な時間を過ごしているのだろう。すぐ下の街道を眺めていると、カップルが手を繋いで歩くのが見えた。しかし、女性の方は吐く息が白く、寒さに追い立てられて足早に過ぎていくのが見えた。
フェイテルはリュエルの肩が冷たいことに気づいた。フェイテルは後ろからそっと抱きしめる。
ふわりとフェイテルの腕がリュエルを包み込む。突然のことにリュエルは肩を震わせたが、すぐにフェイテルに体重をあずけるのだった。
「こうして居ると、温かいですね……」
囁くフェイテル。
「………はい」
リュエルは顔が赤くなっていくのを感じた。
しばらくの間、テラスには静寂が流れる。
「ずっと、離さないでくださいね」
リュエルは胸の鼓動に手を置くと、どくどくと心臓が強く鳴っているのを感じる。
「はい……約束、です」
フェイテルは、そんなリュエルの手に手をそっと重ね合わせる。二人は目を閉じて、お互いの熱を感じあった。そのリュエルの胸元には、贈られたばかりの星のペンダントが輝いている。
