ステータス画面

2人でクロノス大祭

銀に煌めく星灯り・ラテリコス
アクエリオの星・リィナ

■クロノス大祭『ベルに込めた願い〜ずっと一緒にいられますように〜』

「大好きだよ、リコ……」
 リィナが囁くのを、ラテリコスはその腕の中で聞いていた。
 リィナの肩越し、飾り付けられた木に金色の砂が降り注ぐのが見える。砂はきらきらと瞬いて、その光がまたガラスのオーナメントに反射して、幻想的に美しかった。夢のようだ。目に映る景色も、耳に届いたリィナの言葉も、体を包む温もりも。
 夢心地の中、木に飾られた純白のベルがチリンと澄んだ音を響かせる。
(「きっとあれは私のベルだ……」)
 沢山のベルの中、どれが鳴ったかなど分かる筈もないのに、ラテリコスはそう思った。幸せすぎて言葉の出ない私の代わりに、きっとあのベルが応えてくれたのだと。さっきリィナと一緒に飾り付けた、リィナのリボンを結んだ、二人の想いを込めたあのベルが。
「リコ」
 名を呼ばれ顔を上げると、間近でリィナと視線が絡んだ。
「ぁ……」
 心臓が跳ねる。顔が熱い。それを見たリィナが微笑んで、その顔がゆっくりと近づいてくる。魔法にかけられたように目を閉じると、唇にそっと柔らかな物が触れた。
(「リィナさんの唇……キス……」)
 熱い顔が更に熱くなる。嬉しい。恥ずかしい。唇は触れるだけですぐに離れて、顔が離れていく気配に魔法が解けたように目を開けた。微笑むリィナの顔が目に映る。その唇から優しい声が紡がれた。
「リコ、大好きだよ……」
 見詰め合って告げられた二度目の言葉は、ラテリコスの胸を締め付けた。夢のようだけど、これは夢じゃない。さっきは胸が詰まって言えなかったけれど、今度こそは自分の声で応えなくては。
「うん、私も……大好き」
 搾り出すように想いを告げると、これ以上ないほどに顔が熱くなった。顔を上げていられなくて、ラテリコスは顔を隠すようにリィナに抱き付いた。胸に顔を押し当てれば、リィナの鼓動が聞こえる。とくん、とくん、と少し速くて、そして優しい音。
(「リィナさんはここにいる。一緒にいる……」)
 音に身を委ねていると、リィナの声が降ってきた。
「リコ……顔を上げて?」
 恥ずかしさを堪えておずと顔を上げると、リィナの手が撫でるように髪を梳いた。目を閉じ、その心地良さに酔っていると、再び唇が重なった。
「ん……」
 重なった唇は角度を変えて、より深い口付けになる。その深さに怯えて、ラテリコスは身を固くした。
「ん、ん……」
 背を抱く腕に力が込められて、胸と胸とが密着する。とく、とく、とく、と速い鼓動が伝わってきて、リィナも緊張しているのだ、と思ったら身体の力が抜けていった。
 深い、深い口付けを交わす二人の耳に、チリンと澄んだ音が届く。
(「きっとあれはリィナさんのベル……」)
 ラテリコスのリボンを結んだ、二人の想いを込めたもう一つのベル。
 ベルに込めた願いは「これからもずっと一緒にいられますように」ただ、それだけ――。
イラストレーター名:hatsuji