■クロノス大祭『こうすれ、ば、あったかい、ね?』『ぅ…。そうだ、な』
金の砂がきらきらと、白雪と共に落ちてくる。(「お祭り、カイリと、一緒に参加ー」)
シンは隣にいるカイリファを見つめ、顔をほころばせた。
カイリファはすれ違ったカップルを見ながら、少し戸惑っていた。
(「あー、えーと。シンと、一応デート。なんだが……」)
悩みつつ隣に立つシンを見上げる。
(「私はどうしたら良いのだろうか……?」)
他のカップルは密着して歩いているようだ。
(「世の、可愛らしい恋する乙女たちに、ご教授願いたい」)
本気でそう思うカイリファだった。
気が付くと、シンは空に見惚れていたようで、二人の間に距離ができていた。
カイリファは溜息をついて、シンの側に歩み寄り、手を差し出した。
「迷子にならないように」
シンは、嬉しそうにカイリファの手を握った。
(「手を繋いで、見物、するんだぁ」)
それまで冷たかった手が、繋いで歩くことで少しずつ温度を取り戻していく。
(「えと、手を繋ぐの、は『迷子にならないように』って、言われた、けど」)
隣を見下ろすと、少し頬が赤いカイリファと目が合った。
(「あったかいから、何でも良いよ、ね」)
シンがにへらっと笑うと、カイリファも少しだけ笑う。
二人はしばらくお祭りの景色を楽しみながら歩いた。
カイリファは繋いだ手を見つめ、溜息をつく。
手はつないでいる。
(「シンが迷子になるからな」)
何となく甘い雰囲気もある。
(「雰囲気と言うよりは匂いか。シンが食べた菓子の匂い!」)
でも、別にオシャレをしているわけではない。
(「女性物の可愛らしい服は流石に着れない。恥ずかしいから」)
カイリファは、一人悶々と考え込んでいた。
一段と冷え込んできた夜の空気が二人の間に流れる。
シンは、手を引くようにして歩くカイリファを見つめた。
(「おれ、寒いの嫌い、だから」)
えいっと、少し前を歩いていたカイリファを後ろから抱きしめる。
「カイリ、こっち、おいで?」
カイリファは急に引っ張られ、気が付いたらシンのコートの中だった。
ふわっ、と暖かい気配に包まれ、鼓動が跳ね上がる。
「っ!!」
カイリファは声にならない叫びを上げて、顔を真っ赤にした。
こうやってカイリファを抱きしめていると、気持ちが良い。
(「だって、こうすれば、あったかいもん、ね? それに、おれ、カイリを後ろからぎゅうーって、する、の、好きだし。んと、じゃすとふぃっと? って事、かなぁ?」)
慌てるカイリファを見つめ、シンは笑顔を浮かべる。
「ふぁ。あったかい、ねぇ?」
(「いや、あの。暖かいね? ではなくてっ!」)
恥ずかしくて、ドキドキして、カイリファはどうにかなりそうだったが、目の前には幸せそうなシンの顔。
「……いや、うん。暖かい、な……」
カイリファは、負けたと思いつつ、小さな声でそう言った。