■クロノス大祭『2人でお買い物』
今日は、クノロス大祭。モモカは、剣理庵のリュイスを誘ってお祭りに参加した。
団員でモモカと一番仲良くしてくれているのがリュイスだ。
誘ったのはモモカだったのだが、待ち合わせ場所にはすでにリュイスがいた。物珍しそうに辺りを見ている。
「お待たせしましたか?」
小走りにリュイスの元へ向かったモモカに「いいや」と首を横に振る。
「あまりの賑わいに驚いてしまって――」
そう言って、リュイスはまじまじとモモカを見た。ふと、口元に笑みを刻む。
「可愛い髪飾りをしているね。よく似合うよ」
リュイスの言葉にモモカは目を丸くする。「ありがとうございます」と礼を言った。言いながら、少しだけ鼓動が早まっている。
「行きましょう」
賑やかな祭りの中にモモカが一歩足を進める。頷きながら、リュイスが「モモカ」と名を呼んだ。
振り返ったモモカに、リュイスは手を差し出した。
「はぐれないように」
差し出された手をモモカは見つめる。先ほど早まった鼓動が、より高まった気がした。勇気を振り絞り、その手に自らの手を重ねる。
「寒くない?」
気づかうリュイスに「大丈夫です」とモモカは応じる。
その頬は紅くなっていた。それは寒さのせいではなかったのだが、リュイスは「そう?」と案じる様子を崩さない。リュイスのモモカの手を握る力が強まる。
その手の力にモモカの体温がまた、上がった。ドキドキする心臓を落ち着かせるように胸元に手を当て、握り返す手に力を込める。
リュイスはそんなモモカに視線を落とし、ふわりと笑みを浮かべた。
お饅頭を食べたり、旅団へのお土産を買ったり。
充分楽しむことはできたのだけれど、楽しい時間はあっという間だ。
リュイスは今日を記念して、お土産にとモモカにぬいぐるみをプレゼントする。
「いつもだと本を読んでるくらいだけど……」
色々と見て回れて、新鮮な一夜だったとリュイスは言った。
「誘ってくれてありがとう」
礼を言ったリュイスに「わたくしこそ」とモモカは微笑む。
モモカは、初めて飲むチョコドリンクのせいではなく、感情で胸が温かくなっていくのを感じた。
その首には、リュイスからの贈り物が輝いていた。