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2人でクロノス大祭

空色雫・レイア
ドラグナー・サージオ

■クロノス大祭『sugary time』

 ラッドシティの夜に、砂と雪がしんしんと降り続けている。クロノス大祭の喧騒は、金と白の踊り子達と共に遊び、絵本に描かれた夢の国にも似た、優しい光を放ち続けていた。
 そんな夜景の一部として、レイアとサージオの部屋も橙色の明かりを灯し、室内の二人に暖かさを振りまいている。そのキッチン近くのテーブルでは、フルーツとクリームをのせられたスポンジケーキが、デコレーションの完成を待っていた。
「こ、こう、こうだよねきっと……、がんばらなくちゃ」
 レイアはプレゼントに貰った指輪を大事に握るように、両肘を上げて絞り袋を構える。しかし、その姿勢では上手く力の調節ができず、勢いよくほとばしったクリームは、ケーキを縦横無尽に走り抜け、驚いたレイアは絞り袋から手を離してしまう。
「おっと!」
 と、レイアの背後からサージオの腕が伸びてくる。胸板を寄せ、サージオは宙に放られた絞り袋を上手くキャッチすると、いろんな意味で緊張に固まったレイアを励ますように微笑みかけた。
「大丈夫です。レアさん。力を入れすぎないで、リラックスしましょう」
「でも、サージオ君、クリームが……」
「ああ、ケーキの上に飛んだのは塗り込んじゃいますよ。さ、もう一度、今度はオレが見てますから」
「……うん」
 サージオは袋をレイアに渡すと、受け取った彼女の姿勢を、その場で矯正し始める。手が触れる度に、ひゃあ、とか、えと、とか言って一向に力が抜けないレイアに、サージオは後ろから抱きつくような姿勢で腕を沿え、袋を正しい位置に誘導した。
「力を入れすぎないで……そう、最初の頃と比べると、格段に料理が上手くなってますよ、師匠」
「練習してるからね。それよりもサージオ君?」
「あ、はい、なんですか?」
「……こんな時に、そんな呼び方するな、ばか」
 お互いに顔を真っ赤にしながらも、今度は細心の注意を払って、レイアはケーキにデコレーションを施した。深呼吸して、練習を重ねた力の配分を思い出せば、頼れる恋人の導きもあって、これまでに見たことの無い最高の出来に仕上がっていく。

 最後の飾りを小さくケーキにのせて、ついに、祝いのクリスマスケーキが完成した。袋をテーブルに置いて、どんな表情をしているかを確かめに振り向くレイアを、サージオをはそっと抱きしめた。
「サージオ君……。ケーキ、できたね。嬉しい?」
「嬉しいです。こんなに上手に作ることが出来て、プレゼントまで受け取ってもらえて……」
 サージオの胸の中に沈むレイアの薬指に、きらりと、想いの詰まった指輪が輝く。
「正直、レアさんとこんな風になるなんて、想像できませんでした」
「実は、あたしも」
「レアさんは今、どう思ってますか? ケーキが出来て、プレゼントを貰って、オレと一緒に居て」
「嬉しいよ。ほんとに、嬉しい」
 心の内を打ち明けあい、恋人達は正対する。見つめ合う瞳はより近い距離を求め、唇を寄せて、願いを叶えた。
イラストレーター名:うさぎ