■クロノス大祭『Honey』
「可愛かったですわね」「うむ。あの音楽も綺麗だったな」
2人で見た巨大時計。
年に1度だけ訪れる不思議な日。金色の砂が雪と共に舞う幻想的な中、一緒に見た時計塔の不思議。楽隊人形から奏でられる美しい音楽。
「あの楽隊はわたくし達の事も祝福してくれていたのですわ」
「うむ、そうだろうな。だからあんなに美しい音楽だったのだ」
少し暗く、暖かい明かりが灯った部屋。コスモスとアズハルは共にベッドに入り、今日の事を思い出していた。
街中活気ある声と幸せそうな笑顔に溢れる年に1度のクロノス大祭。この日にだけ、不思議な金色の砂が純白の雪と共に降り注ぎ、幻想的な空を創る。
珍しいお菓子を見ては、今度作ってみよう、とか、これはどうやって作るんだろう、とかお菓子作りを趣味にしているコスモスは瞳を輝かせていた。横を歩くアズハルは、そんなコスモスを穏やかに見守りながら、「今度作ってくれないか?」等とリクエストをしてみたりする。巨大時計から出てくる『幸せな恋人たち人形』にも負けないくらい幸せな時間を過ごした。
(「今度あのお菓子に挑戦してみようかしら……アズハルのリクエストでもありますし……」)
そんな事をぼんやり考えていたコスモスの手をアズハルがそっと握る。
「コスモス……愛している……」
アズハルが囁いて優しく微笑んだ。
「わたくしもですわ」
幸せそうに微笑んだコスモスがアズハルの手をぎゅっと握り返す。
「うむ」
アズハルは繋いだ手を少し強く引き寄せ、コスモスを抱きしめた。コスモスはされるがままにアズハルの腕の中におさまり、その背に腕を回して抱きしめる。
金砂と雪が舞う外は美しく幻想的だが、やはり寒い。心は楽しくあったかくなっても、体は冷える。だが、暖かい布団で愛しい者とお互いの体温を与え合えば、心も体も温かい。
「楽しかったですわね……」
「うむ……楽しかったな」
楽しい思い出をたくさん作った幸せな恋人たちは、静かに目を閉じた。