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2人でクロノス大祭

トロイメライ・ユイ
暁天の武侠・タダシ

■クロノス大祭『聖なる夜を共に』

「わあ……素敵ですねぇ……」
 ユイはうっとりと息を吐く。
 デートからの帰り道。立ち寄った公園には立派な木が生植えられており、そこには夜を彩るイルミネーションが施されていた。
 キラキラと輝くイルミネーションに見とれているユイが吐き出す息は、寒さで白く凍っている。
「寒いだろ?」
「はい♪」
 そうタダシが問えば、ユイはくるりと振り返りながら答えた。
 タダシはおもむろにコートのポケットにてを突っ込むと、何か小さな物を取出し、それをユイの手のひらに握らせる。
「やるよ」
 一体何をくれたのかと、ユイが小首をかしげつつ手を開いてみれば、そこにあったのは、シンプルな細いリングにピンクサファイアがあしらわれた指輪で。
「あ、ありがとう、ございます」
 驚き半分、嬉しさ半分といった様子のユイは、頬を赤く染めながら、少々戸惑いがちに礼を述べた。
「気にするな」
 タダシは気恥ずかしそうにユイから顔をそらす。
 ユイはさっそく、もらった指輪をはめた。手を顔の前に掲げ、ぽつりとつぶやくように言う。
「綺麗……」
 タダシは、ふふっと嬉しそうに小さく笑うユイに静かに近寄るとユイの頬に触れ、自身の方に引き寄せた。
 ユイが問いかける間もなく、タダシの唇がユイのそれと重なる。
 突然の出来事に目を見張るユイ。だが、何が起こったのかを理解すると、そっと目を伏せ、タダシの胸元に、指輪をはめた手のひらを添えた。
 どれくらいそうしていたのだろうか。しばらくするとどちらからともなく唇が離され、しばし無言で見つめ合う。
 恥ずかしさに耐え切れず視線をそらしたのは、どちらが先か。けれどほとんど同時に伸ばされた手は、自然と指をからめ合って。
 何とも言えぬ沈黙のまま、二人は帰路へつく。
(「もう話しかけていいか……?」)
 タダシはちらとユイを見やった。うつむけられた顔は長い髪に覆い隠され、表情をうかがい知ることはできない。
(「か、顔から血が引かない、です」)
 ユイはといえば、熱を帯びた頬をどうしたものかと考えあぐねていたのだった。
イラストレーター名:綾瀬みゆき