■クロノス大祭『クロノス大祭の幻』
(「あっち見てもリア充……こっち見てもリア充……」)今日はクロノス大祭。イリークは旅団の皆と楽しく遊んだ。しかし、『好きな人に告白するお祭り』としての面を持つクロノス大祭。勿論、街中幸せそうなカップル――イリークの言うリア充が溢れている中で。
(「なんやムカつくわ……爆発させたろか……」)
今の彼を誰が聖職者だと誰が信じるだろうか。目の据わったイリークは黒いオーラを纏っているように見える。
「あかんあかん、俺は人を祝福する聖職者や。爆発させたらあかんって俺」)
自分の顔を両手でパンッと軽く叩き、
「こういう時はオル兄さんを驚かせてスカっとするのが1番や!」
勢い良く立ち上がった。
「お祭りタノシかったー……シアワセー♪」
自室に戻ったオルノースは、背中からばたんっとベッドに仰向けに倒れる。その顔には幸せオーラが溢れ出た満面の笑みを浮かべて。
(「でも、イル……周りがリア充ばかりだったせいか、ドコか元気無かったみたいだね?」)
ふとイリークの様子を思い出して、仰向けのまま天井を見つめて思案する。そして、
「……よし、イイコト思いついたよ!」
がばっとベッドから起き上がった。
イリークがニヤニヤしながらオルノースの部屋に向かって廊下を歩く。
オルノースもイリークの部屋へ楽しそうに足を向かわせた。
――!?
「な、何やのその格好!?」
「ちょっ……イル!? その格好……っ」
お互いがお互いを見て、目を丸くして驚いた。
イリークはバニーガールの格好をしたオルノースを。オルノースは白い花柄のワンピースを着たイリークを。
「ぶふっ、あっはっは!!」
「あはははは!!」
2人同時に大爆笑した。
「いやー、オル兄さんを驚かそう思って、俺が美人女性に変身したらどうやろかと……そしたら、まさかっ」
「イル元気なかったから、俺が思い切り笑わせてあげようと思って……そしたら元気出るかなって……っ」
肩を震わせて未だに笑いの収まらない2人。流石義兄弟というべきか、2人とも似たような事を考えていたようだ。
「おもろすぎてリア充の事なんかどうでも良くなってしもたわ。今日は2人で酒でも飲もか」
「うん。オイシイお酒あるよ。一緒に飲もうよ」
夜遅くまでバニーガールと自称美人女性の酒盛りは続いた。