■クロノス大祭『両者、相方不在につき…男子会開催之巻』
アムオス、ショウキの二人は、男子会の食材買い出しのため市場へ向かっていた。せっかくのクロノス大祭だというのに、二人の相方それぞれに事情があって、空いているのは男二人という有り様なのだ。
とはいえ、ただの主従以上に仲のいい友人同士であるアムオスとショウキ。
せっかくだから、二人だけで楽しんでしまおうという話になったのだ。
「これはどうじゃろうか?」
「ふむ……」
野菜に卵、魚介、メインとなる肉類などを、和気あいあい話し合いながら物色する。
(「こいつはあの料理に合いそうだな――」)
もちろん、『祭り』と言えば主役は酒だ。その点は二人ともぬかりはない。
料理に、シーンに合わせて何本も買い込んでいく。
真冬の澄んだ空気は思ったより冷たいが、主のアムオスに合わせて用意したカーキ色のトレンチコートはしっかりと冷気を退けていた。
それ自体が楽しみの一つとすらいえる買い出しが終わり、次は家に戻ってシェフ二人の料理会。
冬のお祭りらしくサラダにケーキ、メインのチキン……。
二人ともコートとスーツを脱いで、シャツの上にエプロンを着けて。
ショウキはネクタイを外し、ボタンを少し空けて袖まくり。
「まさに男の料理って感じだな」
アムオスが、ショウキのワイルドな格好に目を細めながらからかう。
主従共に料理の腕はそれなりにあるため、出来上がりも中々のものになったのだが……。
作り手のせいか、なぜか刺身や煮物など、一部パーティらしくないものも混じっている。
「大変な祭りとなってしまったが、迷宮探索の成功を祝して」
「ああ――」
「「乾杯」」
最後はエプロンを外して料理に向かい、いよいよ男子会開催。
打ち合わされたクリスタルのグラスが澄んだ音を立てる。
ゆっくりと、今日一日を思い返しながら飲む辛口の食前酒が喉を焼きながら滑り落ちていく。
そうして、アムオスとショウキのクロノス大祭の夜は穏やかに更けていくのだった……。