■クロノス大祭『ハッピークロノスデイ!プレゼントフォー・ユー♪』
12月24日のクロノス大祭当日、ゼロは赤いリボンがかけられた黒い箱を手に時計塔へと向かっていた。今日はサレリアとプレゼントの交換をする約束をしているのだ。
(「誰かにプレゼントをするなんて初めてだから何だか緊張する……」)
いや、もしかしたら初めてではないかもしれない。しかし過去の記憶が無いゼロには、実質これが初めてなのだ。
だから内容を選ぶのにもとても迷った。出来るだけ普段の彼女の様子を思い出し、喜んでもらえそうな物を選んだつもりだがどうなのだろう。
時計塔が近づくに従って鼓動が早まっていくのが分かる。
中身を見てどんな顔をするだろうか?
ガッカリされたらどうしよう。色んな感情が頭の中に渦巻く。
でももうここまで来たらあとには引き返せない。
待ち合わせ時間はもう目の前だ。
サレリアは時計塔の下、待ち合わせているゼロがやって来るのを待っていた。
その手には緑色の箱。
ゼロは普段緑色の服を着ていることが多いからもしかしたら好きな色なのかもしれないと思ってこの色にしてみたのだ。
(「ゼロさん……大事な人は沢山居るけれど、特に大切な『お友達』……」)
そう、特別な。
抱えている包みをジッと見つめて頬を染める。
もうすぐ彼がやってくる。
待ち合わせ時間が近づくにつれ、鼓動が早くなっていくのが分かる。
今日のために時間をかけて考えたプレゼントを、彼はどんな顔をして受け取るのだろう?
(「喜んでもらえるといいなぁ……」)
溜息を吐いて冬晴れの空を見上げた。
待ち合わせ時間。
時間ぴったりに到着したゼロは時計塔の前に立つサレリアの姿を見つけて足を止める。
だが、ゼロが立っているのは遮蔽物がない広場。サレリアがすぐにゼロに気が付いて駆け寄ってくるのが見える。
縮まる距離にモンスターと対峙するのは違う逃避衝動がゼロに湧き上がる。
(「あわわっ! ど、どうしよう!」)
ワタワタとしている内にサレリアがやってきてゼロの名前を呼んだ。
「ゼロさん!」
「あ、ハイ!」
呼ばれた拍子に思わずプレゼントを落としそうになって抱え直し、サレリアと向き合う。
走ってきたせいかサレリアは軽く息が上がっており、顔も赤い。
釣られて自分の体温も上がっていくのが分かる。
「ハッピークロノスデイ! ゼロさんっ」
サレリアは緑色の包みをぐっと差し出して叫ぶと、恥ずかしそうに顔を伏せた。
その様子にゼロも慌てて包みを差し出して言い返す。
「ハ、ハッピークロノスデイ! サレリア。その、いつもありがとう。これからもよろしく」
相変わらずだ。彼女はいつもボクが出来ない事をやってのける。
こんな時、先に声をかけるなんて自分なら直ぐには出来ない。
そんな彼女と出会えたからボクは変われた。
この気持ちも彼女がくれた。
(「大好き」)
この特別な日をありがとう。
これからもずっと二人で居られますように。
二人は互いのプレゼントを手にそう願った。