■クロノス大祭『Je l'enveloppe bonheurs』
街外れの高台から、虚空の焔・シャノン(c20220)と大鎌の星霊術士・アラド(c20366)は、美しい街の光景を眺めていた。天から降り注ぐ金の砂と、純白の雪。
そんな不思議な光景にシャノンは、感嘆の声をあげた。
「凄いな……本当に金色だ」
「……うん、綺麗だ」
その声に頷くのは、アラド。
「まさか、こうしてシャノンと二人で、この景色を見れるとはねえ……」
思わずアラドは呟く。
その声に導かれるように。
(「思えばこの1年、色々な経験を共にしたな……」)
今までの事を思い浮かべた。
初めて二人が出会ったのは、エルフヘイムの街路樹の下。
「どうしたんだい?」
記憶喪失と空腹でぼんやりしていたシャノンに、アラドがパンを与え助けたことが始まりだった。
「一緒に働かないかい? 行くあてもないなら、ここで住み込みでもかまわないよ」
それからアラドの誘いで、共にパン屋で働くようになった。
アクエリオ水神祭やラッドシティ収穫祭などを、共に楽しむ友人となるのも、時間の問題だった。
ゆるやかに流れる日常を過ごすうちに、いつしか、家族のような……いや、それ以上に離れ難い、失い難い存在になっていたのだ。
アラドを大切に思う気持ちに気付いたのは、ほんの最近。
だからこそ、シャノンはその想いを伝えようと決めたのだ。
ふと隣を見る。
アラドは変わらず、美しい街並みを眺めていた。
「それも……」
シャノンはそっと口を開いた。
「それも全て、お前のおかげだ。この景色も、お前の隣りにいる時間も私にとってかけがえのないもの」
そのシャノンの声に気付いて振り返った瞬間、ふわりとアラドの首に何かが巻かれた。
手編みのマフラーだ。ほわりと微笑み、シャノンは続ける。
「とても、感謝しているよ」
その言葉と共に捧げたのは、頬への淡い口づけ。
突然のことに驚くアラドに、シャノンは思わず、笑みを零した。
「来年も、その先も、共にあることを……」
そうアラドに約束して。
二人のクロノス大祭は、こうして、ゆっくりと終わりを告げたのだった。