ステータス画面

2人でクロノス大祭

墓地の管理人・プネヴマ
紅く染まるは秋桜・ユーリ

■クロノス大祭『〜gyllen natt〜』

「少し冷えてきたな……寒くないか?」
「うん、大丈夫」
 穂馬車を進ませながら行くあての無い旅を続けるユーリとプネヴマ。雪と氷で覆われた森を進む道中、手綱を握るユーリの手を終始冷たい風が吹き抜けてゆく。
 街ではクロノス大祭でにぎわっているんだろうな……過ぎ行く白い木々を横目にそんな事を考えていると、突然ユーリの視界が開けた。
「……こりゃまた」
「綺麗……」
 二人の目の前に飛び込んできたのは、白い輝きで覆われた一面の銀世界。どうやら森を抜け平原へと出たらしい。
 だが二人が目を奪われたのはそれだけでは無い。普段なら薄暗い雪で埋め尽くされた夜の雪原なのだが、今夜に限っては黄金の輝きで彩られていたのだ。
 ――まるで、二人のクロノス大祭を祝うかのように。
「……えい」
 手近な場所に場所を止めると、プネヴマが勢い良く黄金の世界へと飛び込んでいった。
「お、おい!?」
 それを見たユーリも慌てて場所を降り、娘が飛び込んだ場所へと駆け抜けてゆく。
「大丈夫か……って、何だか楽しそうだな?」
「うん、何だかとっても楽しい」
 心配そうに見つめる父に対して、プネヴマは笑顔を向け楽しそうに返事をする。本当に雪が好きだな……と、その笑顔にユーリは安堵の言葉を漏らした。
「だが、流石に冷えるぞ? 馬車に戻ろう、お父さん自慢のマシュマロ入りココアを作ってやる」
 このまま遊ばせても良かったが、いくら綺麗な雪原でもこの時期では冷えて心配である。ユーリは娘を場所に連れ戻すと、ココアを入れて落ち着かせた。
 その後、この場所なら丁度良いかなとクロノスパーティの準備を始める。

「うわ……」
「遠慮なく食べろよ? 今日は二人だけのクロノスパーティだ!」
 二人の前に用意されたのは、若鶏の特製サンドウィッチと、白ウサギの飾りがとても可愛らしいケーキ。旅の途中なのであまり豪勢な物を用意する事は出来なかったが、娘の喜ぶ表情を見てユーリは満足そうに微笑む。
「それじゃあ、わたしからも」
 料理のお返しと、収穫祭の時に果たせなかった想いを込めて。
 プネヴマが父に贈ったのは、ぼんぼりが可愛らしいマフラー。自分の巻いている白いマフラーとは色違いの、父に良く似合う黒いマフラーである。
「ああ……ありがとな、プネ」
 自分の首にそっとマフラーを巻く娘の頭を、感謝の気持ちを込めてユーリは優しく撫でた。
「うん……ユーリもありがとう」
 撫でられたプネヴマもだが、ユーリも笑顔を浮かべその喜びを感じ合う。
「「……メリークロノス!」」
 そして指し合わせるまでも無く自然に重なる祝いの言葉。父娘のクロノス大祭は黄金の世界に彩られ、ささやかな幸せと共に過ぎて行くのでした……。
イラストレーター名:ゆゆ