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2人でクロノス大祭

刻まれた暗兵・デュラン
繊月歌・リズ

■クロノス大祭『言葉にならない想いは口づけで』

 彩られた大祭の喧騒から一歩抜け出して、ふたりだけのひそやかな時を過ごそう。
 不思議な歯車のオーナメントが飾られた背の高いツリーを仰げば、白雪と共に舞い散る黄金の砂が、紺青色の夜空にきらめきながらふわりと降りそそぐ。

 ――ほら、あっちだ。耳を澄ましてみろよ。
 ――あなたにも、聴こえたでしょうか?

 広場に集まったまばらな人影の誰もが、この街ならではの美しい情景に目を細め、遠くでささやく時計塔の歌だけを静寂から拾い上げるように耳を澄ましていく。
 今宵デュランとリズのふたりも、その中に居た。
 大切な時間を隣で共に過ごせる幸せに、緩く微笑みを交わしあいデュランはリズの肩を引き寄せた。舞い散る雪は美しくも、12月の夜気は肌を刺す。その冷たさから互いを護るように、肩を寄せ合い歩調を合わせて広場をぐるりと歩く。
 互いの温もりが伝わるのなら、身じろく寒さも心地よさへと変わっていく。ふたりの暖かな記憶として、今日の祝祭はより想い出深いものとなる。
 想いを告げあい、確かめあう人々で静かに賑わう刻の樹の広場をあとにして、ふたりはそのまま広場から枝分かれに延びる路地へと消えた。
 立ち止り振り返れば、煌びやかな祝祭の光が遠巻きに見える。どうかしたのですか、と、リズがデュランの顔を見上げ首をかしげた。
「いつかみた星空を思い出してな」
 感慨深げに呟いたデュランの見据える先には、あまりに優しく穏やかな街灯り。
 決して派手ではなく、けれど砂と雪が互いに煌めきあって夜の帳に咲く。その幻想的な風景は、引き込まれそうになる程に胸を打った。
「きれい……ですね」
 2人の交わした短い言葉は白い息となって雪に溶けた。同じ時間を過ごし、同じ景色を見て、同じ思いを抱き、同じ想い出になる。そして胸には同じ愛しさを。
 それが幸せで、たまらなく嬉しい。ずっとこの幸せが続きますように――リズはそっと祈った。
 愛らしい恋人の横顔にデュランは口元を緩めた。
 ふたたび肩を抱き寄せて、誘うように路地の奥へ。向き直ってそっと口づけを落とせば、突然のことに目を丸くする彼女。
 けれどすぐに幸せです、と微笑むから、たまらなく愛しくなって抱きしめた。
 言葉にしきれない想いもきっと、こうすればより伝わるだろう。
 もっとずっと寄り添っていようと、誰も居ない路地裏でふたりは温もりをわかち合う。
 遠くで時計塔が奏でる祝祭の歌。
 その音色をふたたび聴くときに、いつまでもこの愛しさが胸に在りますように、と。
イラストレーター名:キョウシン