ステータス画面

2人でクロノス大祭

眠れる灰色熊・アレクセイ
桜苺の星霊術士・アミナ

■クロノス大祭『金色の光の中へ』

 クロノス大祭――時の星霊クロノスが走れば、誰もが大忙し。

「い、急がなきゃ……っ!」
 それは長いスカートの裾を抑えながら、何故か全力で走っているアミナも同じであろう。額に少しだけ汗を滲ませ、彼女はどこかへ向かって走り続けていた。
「ん……?」
 そんな彼女の様子を、偶然アレクセイが目撃した。言わば、通りすがりである。
「どうした? お嬢ちゃん」
 気になったのか、アレクセイはアミナに声を掛けた。
「急いでるの!」
 しかし、アミナが足を止めることはなかった。ひたすら走り続けながら、慌てた声が返ってくる。
「急いでる、か……」
 珍しいこともあるもんだなぁ、とアレクセイはしみじみと思った。
 相変わらず、ひらひらと大きく波打つスカートの裾を抑えながら走る、アミナの姿を見送り……思わず、彼はため息を付いていた。
(「どこに行こうとしているか知らんが、あれだと時間掛かるだろうに……」)
 スカートという服は、なかなかに不便なのだとアレクセイは苦笑いした。特にアミナが着ているような裾の極端に長いスカートとなれば、尚更のことであろう。
「なぁ、嬢ちゃん」
 アミナの横を並走しながら、アレクセイは声を掛ける。ちらり、とアミナは彼を見て、首を傾げて見せた。
「ん。何?」
 先程「急いでいる」と言いながらも、律儀に返事が返ってくるのは流石と言うか何と言うか。これでこそアミナだと、アレクセイは笑った。

「送ってやろうか?」
「……え?」
 やはり、辛かったのであろう。あっさりと立ち止まったアミナを前に、アレクセイはグランスティードを召喚する。
 現れた軍馬は、「ひひーん」といななくと、足を折り、背に乗る様にとアレクセイを誘っていた。
「わぁ」
 星霊グランスティード――天誓騎士にのみ許された、軍馬の星霊。
 様々な星霊を友としてきたであろう、星霊術士のアミナは一体、グランスティードの背に何を思うのだろうか。
「いいの?」
「知らん仲じゃあるまいし、気にするな」
 ひょい、と慣れた様子でアレクセイはグランスティードに跨る。スカートを少し気にしながらも、預けた鞍に跨ったアミナが手綱を掴むのを確認してから、アレクセイも手綱を手に取った。
「しっかり捕まってな、嬢ちゃん。振り落とされんなよ?」
「う、うん」
「いくぞ、相棒。超特急で送り届けるぜ!」
 高々と響く、グランスティードの蹄の音。そして、後ろに流れていく景色。
「早い早い!」
 はしゃぐアミナを背に感じながら、アレクセイは楽しげに笑みを浮かべていた。たまには、相棒に誰かを乗せて走るのも悪くないなと、そう思う。

 そんな、クロノス大祭での1コマ――辺りには、金色の砂と純白の粉雪が、幻想的に降り注いでいた。
イラストレーター名:龍胆