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2人でクロノス大祭

自由活達な質実剛健児・レンジ
アエテルタニス・スノウ

■クロノス大祭『―寒空の帰路、黄金の雪花、心と共に温もりを―』

 クロノス大祭。
 寒空の下、様々な炎が舞う。祭りの幻燈、祭りの照明、祭りの屋台で食べ物を焼く炎。
 そして、レンジを焦がすのは、隣に歩く少女……スノウへの想い。
 いつもは冷静な横顔を見せている彼女。それが今は、年相応にはしゃぎまわる姿を見せている。
 素晴らしい一日だったと、レンジは今日を振り返り思った。
 それは、スノウも同じだろうか……。いや、聞くまでもない。祭りの出し物や屋台や遊戯、スノウはそのすべてに、心から楽しそうな表情を浮かべていた。ずっと隣で一緒にいたレンジは、それを思い起こし……少しばかり胸の奥がくすぐったい。
 あの笑顔を見るたび、胸の奥が熱くなる。そして、ずっとそばに居たいと思う。
 守ってあげたいと思う、暖かな笑顔を見たいと思う。
 寒空の下、寒風が吹くが……レンジはその寒さを忘れている自分に気が付いた。
「……っくしゅん」
 ふと、小さなくしゃみが響いた。
 スノウだ。この寒空、肌寒さを感じるのは当然。
「えっ……?」
「どうぞ」
 驚いたスノウの顔を見つつ、レンジは己の上着を、彼女の肩へと静かにかけていた。
「体冷やすと、良くないですから。……大分冷えてきましたね」
 言った後で、レンジの胸中に気恥ずかしさが襲ってくる。
「ありがと、レンジ」
 スノウが微笑み、礼を述べる。さらなる気恥ずかしさと照れくささに、レンジは感じた……自分の顔が、赤くなってしまったのを。

 またしばらく、祭りの会場を歩き回る。が、空気の冷たさは変わらずだ。
 スノウの吐く息が、白いそれに。両手が冷たいのか、時折息を吹きかけている。
 手をこすり合わせ、寒そうなスノウを見て、レンジは彼女の手に自分の手を伸ばし、握った。
「あっ……?」
 驚いたようだが、スノウはすぐに安堵した顔になった。その様子を見て、レンジもまた安堵する。
 自分の手の暖かさが、冷え切った彼女へと伝わる。その事を思うと、レンジの中に秘められた想いが、ますます強くなる。
「……手……すごく、冷たそうだったから……」
 その想いが伝わったのか。
 スノウの口から、言葉が出た。
「……これからも……」
 それは、レンジの胸に、強く、優しく染み込んだ。それは何よりも、嬉しい言葉。
「これからも……よろしくね。レンジ」
 そんな彼女からの言葉には、返答するのはただ一つ。
「ええ、こちらこそ!」
 きっと今の自分、はにかんだ笑顔になっているだろう。
 けれど、と、レンジはスノウの手を握りつつ、思った。
 けれど、周り全てが、輝いて見える。寒かった周囲が、温かく感じる。
 これが、誰かを好きになる、愛するって事、なんだろうな。

 ふと空を見ると、白い雪が静かに、舞うようにして降り始めていた。
 けれどレンジにとっては、それは黄金色をした祝福の花吹雪。おそらくは、スノウもそうだろう。
 黄金の雪が降る中、レンジは暖かな気持ちになって、スノウの手を握り続けていた。
イラストレーター名:伊藤知実