■クロノス大祭『ケーキ de クロノスパーティ!』
(「寒い夜は暖かい恰好で食事を囲み、ぬくぬくするに限る」)美しい夜景を眺めながら、ヴァントが心の中で呟く。
その為、今日はこうして祭りを眺めながら家でゆっくりと楽しむことにした。
「ヴァントたん見てみて! ケーキ凄いよ!」
大はしゃぎにケーキを運んでくるパルシェレート。
足元には子豚のにくがちょこちょこと短い足を忙しなく動かして続く。
「なんかすごいケーキだな」
生クリームの上にたくさんの果物が飾られたケーキは、豪華な出来栄え。
「えーっと……二人だから真っ二つ?」
早速切り分けようとパルシェレートがナイフを通そうとした。
「パル、もう1回切り分けないといけないだろう」
手を止めて、ヴァントをみるパルシェレート。
彼の視線の先には、床でちょこんと座り込んだ二体。
(「星霊はケーキ食べるのか?」)
にくはともかく、星霊が何かを食べている姿は見たことがなかったが。
「あ! ごめんよーにくたんと星霊の分もだな!」
そのまま受け止めたとおり、ざっくりとナイフを通して4等分。
大まかな切り分け方が彼女らしいところ。
「ヴァントたん食べる? る?」
返事をしようと思った彼の目に飛び込んだのは、ケーキの刺さったフォークを差し出すパルシェレート。
(「何っ、パルからあーんだと!?」)
心の中驚きでいっぱいのヴァントを見つめる彼女の顔は、無邪気な微笑が浮かぶ。
「はい、あーん!」
彼女の方は既にやる気満々である。
天真爛漫な彼女からのアプローチが意外すぎたか、鼓動は加速するばかり。
(「そんな馬鹿な。 心臓が早く動いているような……いや、気のせいだ」)
照れくさいがここは男、ドンといけ。
ぐっと体を乗り出すと、ぱくりとフォークを銜える。
「……おいしかった?」
柔らかな微笑を浮かべるパルシェレート。
「ん、うまい」
そして微笑で返すヴァント。
よかったと微笑むパルシェレートは、膝の上に抱えたにくへ同じくケーキを差し出し、もごもごと食べさせていく。
(「不思議なもんだな。 綺麗なんだが」)
奇跡の金の砂、そして白い雪。
二つの入り混じる空が煌き、いつも見ていた世界が一気に神秘的になる。
(「その……」)
視線が再び、彼女へと戻る。
にくの頭を撫で、嬉しそうにする友達の様子に微笑を浮かべで撫で回していた。
彼の視線に気づいたパルシェレートは、こてんと小首を傾げて視線を返す。
「なんでもない。なんでもないからな」
誤魔化す言葉と共に視線は窓の方へ。
「ヴァントたん、お外きれーだに? 雪と金色きらきらだー」
ヴァントは澄んだ瞳を輝かせて見つめる彼女を、ちらりと見やる。
また遊ぼうな。 なんていうにはまだ早い。
まだ始まったばかりなのだから。
今日は楽しかったと、彼女に言ってもらえるように……今日は存分に遊びつくし、楽しむのだろう。