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2人でクロノス大祭

神楽巫女・シズカ
ハンマーの魔獣戦士・ユーグ

■クロノス大祭『記念祭の椿事〜コレはご当地料理?!〜』

 ふと、シズカは気付いた。
「そろそろアレを始める時期ね」
 アマツカグラにいた頃なら、下準備を始めている御節作りだ。
 あれやこれ……と野菜等を並べているところにユーグがやって来た。
 特にすることが無いので「台所でツマミ食いでもするか」とやってきたユーグが「どうかしたのか?」と問いかけると、シズカは「手伝ってもらってもいいかしら?」と声をかけた。
 節目の料理だ。コレは外せないモノだろう。
 そのことを簡単に説明すると、ユーグは「じゃあ手伝うか」と頷いた。上着を脱いで腕をまくり、エプロンまで装着して気合十分だ。
(「先ずは七面鳥の腹を割いてハーブを詰め込んで……」)
 イメージトレーニングしている中、シズカが手渡したのはユーグからすれば何やら見慣れぬ野菜だった。
「……?」
 首を傾げつつも言われるままに人参、大根、クワイ等に包丁を入れ、ビネガーに付けたり薄味で煮ていく。料理は、淡々と手際よく進んでいった。
 綺麗に、これもまたユーグからすれば見慣れない箱に料理を詰めていく。
 シズカから『節目の料理』と聞いて、本日の大祭での食事を連想したユーグだったのだが、ふと「これはもしかして全く別の料理を作っているのではないか」と気付いた。
「手伝ってくれてありがとう」
 慣れた手つきのまま「助かるわ」とユーグの助力に礼を言い、シズカが料理しているとユーグは「いや」と呟き、言葉を続けた。
「シズカさんの地域では、こういった料理を作るんだな」
 ユーグの声に「え?」とシズカは振り返る。相変わらず料理は続けつつ、ユーグは「俺の地域ではこの時期になると……」と大祭の時に作る料理の話をした。
 七面鳥の丸焼きやポットパイ、ケーキ……そんの話をしていると、シズカは「――え」と小さな声で呟いた。
 その声に思わずシズカへと振り返ったユーグなのだが、なんでかシズカはまるでカルチャーショックを受けた様子だ。
 変なことでも言っただろうか? などと思ったユーグだったが、そうこうしていると料理が出来上がりひと段落した。
(「次は、地域時節にあう料理へ挑戦……ね」)
 こっそりシズカは決意を固めた。
 シズカが作っていたの御節料理……明ける年への準備だ。本日の料理としては、ちょっとばかり早かった。
 何やら決意を固めるシズカを横目に見ていると、ユーグはシズカから「この料理は数日後に食べるものなの」と聞いて若干気落ちする。
(「せっかくうまく出来たと思ったんだがな……」)
 だが、普段は物静かなシズカが意外と表情豊かだったことを思い返し「楽しかったな」と思いつつ後片付けもまた手伝う。
「ユーグさん」
 箱詰めにされた御節料理以外すっきり片付いたところで、シズカが口を開いた。
「来年もまた手伝ってくれるかしら?」
 その問いに、ユーグは数度瞬いた。ふと、口元に笑みを刻む。
「ああ、勿論」
 その答えに、シズカもまた微笑んだ。
イラストレーター名:神宥