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2人でクロノス大祭

赤空のアルクス・アレフ
雲雀の魔曲使い・シュロ

■クロノス大祭『飛び入り参加』

「何だか、良い雰囲気の街だね?」
「確かに……綺麗だな」
 シュロを誘い、アレフは彼女と仲良くラッドシティを回っていた。時は丁度、クロノス大祭。祭りに集まった人々で、街は明るい雰囲気に包まれていた。
「ん?」
 どこか良い場所が無いかと辺りを見渡していたアレフの目に、興味深い物が飛び込んできた――『飛び入り参加歓迎』と大きく書かれた、ダンスパーティーを知らせる看板である。
「折角だから、参加してみない?」
「上手く、踊れるだろうか……?」
「入ってみるだけでも良いんじゃないかな? ね?」
 シュロと一緒にダンスパーティーに参加する。こんな機会は恐らく、そうそう頻繁に訪れるようなものではないであろう。良い思い出づくりになると、そう思ったのだ。
 少し戸惑っているようにも見えるシュロの手を引き、アレフはきらびやかな建物の中に入っていった。

「わあ……」
 建物の中は、貴族の舞踏会を思わせるような、豪華な飾りで彩られている。しかし、どこか軽い雰囲気の漂う、どちらかというと馴染みやすい会場であった。
「ちなみにね、僕もダンスの流儀とかステップとかをあまり知るわけじゃあないんだよね」
「え……大丈夫なのか、それ」
 大丈夫なのかと言いながらも、シュロはそこまで心配しているようには見えなかった。恐らく、この独特の雰囲気のおかげであろう。
「シュロさん」
 すっ、とシュロに右手を差し出し、アレフはニコリと笑って見せた。
「とにかく、踊らないかい? 折角さ、来たんだから」
「……ああ」
 差し出された右手に自身の右手を乗せ、シュロは笑う――その時、丁度音楽のテンポが変わった。クラシック調だけれども、どこか明るい曲調である。そんな音楽に合わせて、アレフはシュロの身体を引き寄せた。
 最初はノリを重視に、軽やかにステップを踏んでいく。少しずつ、少しずつではあるが、それはダンスらしい形になりつつあった。
「そう言えばさ」
「ん……?」
 ふいに、アレフはシュロに話しかけた。
「誕生日の時にも言ったけどさ。今年色々あって、今もこうやって過ごしているけども。今日この時だけで終わるんじゃなくて、来年もこうやって色々一緒に過ごせればなって思うよ」
 驚いたのであろう。シュロは軽く瞬きを繰り返した後、「そうだな」と言って笑った。彼女の耳元で、赤いイヤリングが揺れた。それを見て、アレフも笑う。
「イヤリング、付けてくれているんだ」
 それを言ってから、アレフは少しだけ後悔した。言わない方がカッコよかった。そう思ったからだ……しかし、そんなことは気にせず、シュロは照れるように笑った。
「似合う、かな?」
 そんなシュロを見ていると、何だかどうでも良くなってしまった。
「とても似合ってるよ」
 『カッコ付け』はきっと、必要ない。ただ、一緒に楽しい思い出を作ることが出来れば、それで良いのだ。

 細かいことは、気にしなくても良い――さあ、ダンスの続きをしようか。
イラストレーター名:トシトキコ