■クロノス大祭『夕方ウサギと宵の旅、チケットは告白の果てに』
楽しかったお祭りの帰り。お祭りの衣装のまま、灰色ロップイヤーなライソウルの手を引き、白いウサミミをぴょこ付かせてウヅが歩いている。
祭りの最中にウヅに言われたことをライは気にしており、歩みを止めないまま小さなお嬢様に訊ねる。
「……さッきの言葉、本気かァ?」
ぽそりと、本人としてはさりげなく切り出したつもりだが、緊張しているのが丸分かりである。
「さっきのー? なにがー?」
もっとも、ウヅはそのあたりの機微にはうとく、全く気付くことはなかったのだが。
「よく分かんないけど、ウヅはウソつかないよぉ!」
雪道に小さな足跡を楽しげに残しながら、少女は満面の笑みを浮かべてライを見上げる。
「俺が守ッてくれるから、ウヅも俺を守るッて言っただろ?」
いったん歩みを止めて、ウヅの方にも止まってもらって。
一大決心をしたうえの、真面目な話。
「うん、だってだいじな人だもん!」
けれども、直後に返って来た少女の返事は、嬉しくはあるものの、ライソウルの期待したものとは異なっていた。
「違うんだ、少し……」
困ったような、照れたような表情でライソウルは否定する。
より具体的に説明するには、年頃のオトコとして緊張してしまう。
「誰よりも、俺はウヅを護りたいんだ。誰よりも大事なんだ。そ、その……大好きだからなァ!」
告白。
年上の自分から、年下の大事な人へ。
祭りの後の高揚感も手伝い、これ以上なくストレートに告げてしまう。
「……う? ウヅもライくん、ダイスキだよぉ? ちがわない、ちがわなーい!」
それでも。
幼いウヅには、ライソウルの意図が、意志がしっかりとは伝わらなかったようだ。
(「……いつ告白だったと、気付くかな」)
少し寂しく思うライソウルだったが、楽しげにぽてぽて歩くウヅを見ていると、『大事な人』でもいいかもと思いなおす。
(「それでも、大事な人、だぜ」)
今のところは、とりあえず、それでも。
多少の妥協をしつつ、複雑な感情を含んだ苦笑を浮かべるライソウル。
(「うーん、ウヅもダイスキだけど、何がちがうんだろ? ウヅもだれよりも、ずっといっしょにいたいよぉ?」)
再び歩きだした『大事な人』を見上げつつ、ウヅは不思議そうに首をかしげる。
どうやら、ライソウルの切ない気持ちが彼女にちゃんと通じるには、もう少し時間がかかるようなのだった……。