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2人でクロノス大祭

英雄の影・セツナ
ゴッドウィンド・シロ

■クロノス大祭『『誓い』の交換』

 祭りの日の夕刻。神秘的な夕やけが街並みを真っ赤に染める中、セツナは恋人のシロの手をとって、ランプで飾られた並木道を散策していた。
「なあ、知っているかシロ? 始めてみたときに、一目惚れだったんだぜ」
「知ってた。セツナの気持ちは」
「思わず追いかけて、一緒の旅団に入って、自分なりの勇気を出してダンスパーティーに誘ってみたんだ。そして、告白した。過ぎ去ってみれば一瞬だけど、いい思い出になったよな……」
 セツナは、浮つく気持ちを抑えきれずに一気にまくし立てる。
「うん。告白された時、とても嬉しかった。それにしても、これが初デートなんだね……ドキドキしているよ」
 好きって気持ちが先行して、振り回してしまいそうでシロは自分が怖かった。
「俺もだ……」
 それから、二人はずっと歩いた。他愛のないことを小鳥のようにさえずりながら。
 並木道は、恋人でいっぱいだった。そんな中を、大好きな人と一緒に歩いているということが二人の胸をいっぱいにする。
 そして、日が沈み始めた頃、セツナは懐からアミュレットを取り出した。
「シロ……受け取って、くれ」
 照れくさそうに。そっと渡す。
 それを見て、シロの顔には喜びの色があふれた。
「いい……の?」
「ああ。こういうのも恥ずかしいけど、ずっと一緒にいてくれよ」
「もちろんさ。私を幸せにできるのはセツナだけなんだから」
 シロはアミュレットを受け取るとそれを腕にはめた。そして彼女も懐から指輪を取り出す。
「これは私から……大好きだよ、セツナ」
 そう言って、シロは強引にセツナの左手の薬指に指輪をはめる。
「ちょ……これは……」
「約束、だ。ずっと一緒にいるよ。だから……セツナも、ずっと一緒にいて。私は、その、セツナに嫌われても、一生はなれない。ずっと追いかけるから」
「あ、ああ……俺もだ」
 と、視線が合う。二人は恥ずかしくなって同時に顔を背けた。
 それから数秒。
「「あの……」」
 同時に言葉が出た。
「なんだ?」
「なに?」
「シロから……」
「いや、いいよ。セツナから」
「ああ。もう一度いう。好きだ」
「私も同じ事を考えてた……セツナ、今日は朝までずっと一緒にいよう」
「ああ」
 そして、二人は手を繋ぎ直すと、ゆっくりと歩き始め、やがて街並みに消えていった。
イラストレーター名:あるち