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2人でクロノス大祭

華廻エトランゼ・リシャ
宵篝火・セツナ

■クロノス大祭『星の雫と溶けた温もり』

「セツナくん寒くない?」
 深々と雪と金砂の降る、幻想的な世界。
 掌差し出し、触れては消えるそれを眺めていたリシャは不意に気付いて、大切なひとの手を取る。
 冷たいそれに驚いて、彼女はセツナを見上げる。
「手、冷えてるよ」
 両手で彼の手を包む。小さな彼女の手では包みきれないことに、改めてリシャは金色の瞳を瞬いた。
「……、俺よりリシャの方が冷たい」
 確かなぬくもりをより感じたくて、僅かの口実を声に乗せて、セツナはリシャの手を頬に寄せる。
 ちょっと跳ねた心の音。大祭の喧騒離れた静かな庭園に、響いてしまいませんように。
 彼の、ひとつひとつの仕種に惹かれる。魅せられる。
 リシャはふる、と頭を振りたい気持ちで心の音を懸命に隠して、彼の顔を見上げる。その顔に心配そうな『いろ』を見て、彼は少し悪戯っぽく笑う。
「──リシャが温めて、くれるんだろ?」
 頬から下げた、絡めたふたりの手。
 月明かりにも静謐に、指輪が光る。
 彼の指には、透明な紫の石の填まった、銀のそれ。
 彼女の指には、淡い桃色の薔薇を1輪象る、小さなそれ。
 互いに褪せない光と、永遠の誓いを篭めて贈った、大切な、宝物。
 そう。
 この先の光と、この先の、誓いと。
 ふわりとリシャが微笑んで、手を伸ばす。
 ぎゅ、と、彼を、抱き締めて。
 きゅ、と、彼を、あたためて。
 だから、お願い。
「じゃぁわたしはセツナくんがあたためてね。……この先も」
 ねぇ、約束……。
「一瞬でも多くの時間を貴方と過ごせますように」
 立てた小指を差し出せば、セツナの片腕がしっかりとリシャの肩を抱き寄せて、彼の小指が彼女のそれに絡む。
「……勿論、約束」
 額を合わせ、至近距離で微笑み合う。
 溶けたのは、雪、それとも金の砂?
 それともふたりの体温と、重なり合った心だろうか?
 こうして傍に添えることに、誓い合い許し合える相手が見付かったことに、溢れんばかりの幸せを噛み締めて。
 この先になにがあるかは、判らない。
 それでも願うは、真摯にして純粋な、小さな我侭。

 ──どうか来年も、共に在るように。
イラストレーター名:霧夢ラテ