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2人でクロノス大祭

征服者・ヴィンツェンツ
紫炎の薔薇・リセリア

■クロノス大祭『The Lovers』

 ラッドシティは、クロノス大祭を楽しもうとする人々でにぎわっていた。降りそそぐ雪と金砂の中、町並みは華やかに飾り付けられ、通りは笑い声で満ちている。
 恋人になって初めてのクロノス大祭を、ヴィンツェンツとリセリアは白い時計台のある白の広場で過ごそうと決めていた。
「それは……」
 ヴィンツェンツはリセリアの胸元に輝くペンダントに気がついた。Die Mitteilung der Rose。根元の蕾から広がった薔薇の花弁が広がり、翼の形になっているそのネックレスは、ヴィンツェンツがリセリアに想いを告げた時に贈った物だった。
 特別な日に、自分が贈ったネックレスを身に付けてくれている。それがヴィンツェンツには嬉しかった。
「当たり前だよ! 私の宝物だもん」
 まるでヴィンツェンツの心を読んだようにリセリアがにっこりと微笑んだ。その笑顔に、ヴィンツェンツの胸に愛おしさがわいてくる。それだけでなく、もっとたくさんの感情も。
(「もっと傍にいたい、わかりあいたい、喜びあいたい、笑顔を見たい、からかいたい、抱きしめたい、手を繋ぎたい、背を預け、護りたい……ずっとこればかりだ。治そうと思えないあたり、まったくもって重症だ」)
「行こう!」
 リセリアにうながされて、ヴィンツェンツ達は時計台にむかった。
 白の時計台は、その街の灯に淡く照らし出されていた。夜の空からは雪と金色の砂がきらめきながら舞落ちてくる。
「きれい」
 リセリアが思わず呟いた。初めてヴィンツェンツと一緒にすごすクロノス祭に、リセリアはずっとドキドキしっぱなしだった。
「これを」
 リセリアの首にふわりと暖かいマフラーがかけられた。真っ白なカシミアのマフラーには、ふわふわの毛玉に小さい手足とシッポを生やしたような、かわいいキャラクターの柄が編み込まれている。
 びっくりして振り向いたリセリアに、ヴィンツェンツは優しく微笑んだ。
「プレゼントだ」
「あ、ありがと」
 照れたようにお礼を言って、リセリアは小さなプレゼントボックスを取り出した。
「私もプレゼント」
 リセリアはドキドキしながら箱を開けるヴィンツェンツを見つめる。箱の中に入っていたのは、小さな銀の指輪だった。
「ありがとう。大切にしよう」
 嬉しそうにほほえんで、ヴィンツェンツは指輪を左手の小指にはめた。銀色に輝く指輪は、彼によく似合っていた。
 リセリアは深呼吸して呼吸を整える。プレゼントを渡す事も大事だけれど、リセリアにはもっと大切な事があった。どうしてもヴィンツェンツに伝えたい、自分の気持ち。
(「私の気持ち、ちゃんと伝わるかな……」)
「大好き、です。ずっと傍に居させてね……?」
「こちらこそ」
 恋人と過ごす、穏やかな時間。
(「クロノスに祈りたい。この時間がずっと続くように、と」)
 ヴィンツェンツの願いに応えるように、白い時計台の鐘が鳴り渡った。
イラストレーター名:泉 成人