■クロノス大祭『二人だったら、あったかい。』
愛しい人と結ばれて初めて一緒に過ごす大きなお祭り。街中賑やかな声が溢れ、様々な商品が並べられている。そのどれもが行きかう人々の目を奪い、足を止めていた。
不思議な金色の砂が降り注ぎ、共に純白の雪が舞う。
「雪、か……」
スティングラーが空を見上げて呟いた。
「ロマンティックですわね……」
隣を寄り添って歩くソレイユが、うっとりと目を細める。
「ああ……」
暫し足を止めて、空を見上げる2人。
金色の不思議な砂は触れると解けるように消えてなくなり、まるで金色の雪のようだ。
「でも、ちょっと寒くなってきたましたわ」
ソレイユが少し苦笑しながら肩を竦めた。
「確かに、少し寒いか……でも」
スティングラーが、そっとソレイユを抱き寄せる。
「……ええ、こうしてると、温かいですわね」
スティングラーに身を預け、ソレイユは安心したように微笑んだ。スティングラーの腕の中がソレイユにとって一番安心して落ち着ける場所だから。温かくて落ち着く。
「それに……」
ソレイユは自分のマフラーを解き、少し片側を引いて片側を長くする。その長くした方のマフラーをスティンガーの首に、くるりと巻きつけ、
「こうすれば、もっと温かいですわ」
幸せそうに微笑んだ。
「ああ……温かい……」
その笑顔に穏やかに微笑むスティングラー。このマフラーも愛しい妻の笑顔も寒さを忘れさせてくれる。
「……ねえ」
スティングラーを見上げてそっと目を閉じたソレイユ。
「……」
ソレイユの求める事をすぐに理解したスティングラーが、そっと顔を近づけ、優しく口付けた。
その唇のぬくもりは優しく心地良い。じきに訪れる春の陽射しのようにソレイユを幸せにしてくれる。
「……うん、幸せ」
静かに唇を離したソレイユが、真っ直ぐスティングラーを見つめ、ぎゅっと抱きつく。そのソレイユを、そっと抱きしめ、
「……ああ、そうだな」
穏やかな声で囁いた。その腕の中の大切なぬくもりを抱きしめて――。