■クロノス大祭『「生意気だけど可愛い妹分と♪」「不肖の姉貴分と!」』
降り注ぐ金砂と、雪の純白――それぞれに輝き、染まる街を眺めながらユウカとネミッサは女の子二人でおしゃべりしつつクロノス大祭を堪能していた。「一人身の二人で寂しくクロノス大祭巡り〜」
「ちょ!? わたしにはちゃんと恋人が居るってば! ……今日は都合が悪くて一緒に居られないだけよ!」
歌うように言ったユウカの発言に、ネミッサは即ツッコミをする。
ぷりぷりするネミッサに「あはは」とユウカは悪びれることなく笑った。年の差に関係なく……ユウカが実際より年若く見られることも要因の一つであるかもしれないが、二人はふざけ合って街を歩く。
「なによもう!」
まだちょっと不機嫌な様子でネミッサはぼやいた。
「折角ホントの『一人身』のユーねぇに付き合ってあげてるのに」
やたらと『一人身』を強調してユウカに反撃する。
「あはは♪ ごめんね、ミサ♪ ……って、強調しないでよ! 悲しくなるから!」
ユウカの様子にネミッサは満足気に「ふふん♪」と鼻を鳴らした。
やいやい言い合いながら、結局は仲がいい。
ユウカはネミッサのことを少し生意気だけど、可愛らしい妹分だと思っていて、保護者として暖かい目で見守っている。
実はネミッサの方がしっかり者かもしれないが、それでも……もっと素直に、思いっきり甘えてくれれば良いのに、とも思っている。
対してネミッサはユウカのことを――表にはほとんど出さないと言えるが――大切な恩人だと思っているし、感謝もしている。
でも、だからこそ甘えたくは無いとも考えていた。
二人はウィンドウショッピングをしたり、実際お店に突撃して小物を見たり、服を手にとってみたりと楽しんだ。
「あ! このスカート、ユーねぇに似合うんじゃない?」
ネミッサはヒラリと一枚のスカートをユウカに示す。
「良いね♪」
ユウカはネミッサからそのスカートを笑顔で受け取るが、「む」と少し不満げな表情に変わった。
「でも丈が少し長めかな……?」
ユウカの発言にネミッサが呆れて呟く。
「どれだけミニスカに拘りが……歳を考えれば良いのに」
ネミッサの小さな呟きを、ユウカは聞き逃さない。
「むぅ、良いじゃん別にー。こだわりは大事だよ?」
妙にキリッと、力強く宣言する。
(「ダメだこの姉。早くなんとかしないと……」)
ネミッサはこっそり息を吐き出した。
それでも――生意気だけど可愛い妹分と。――不肖の姉貴分と。
時々悪態混じりでも……大切な人。
今日を、大切な人と過ごせたことに感謝を。