■クロノス大祭『雪な酒』
陽気で楽しく、ロマンティックなクロノス大祭。街の酒場も沢山の客で賑わっている。その一角で、アイリスとマーサーはテーブルを挟んで座っていた。
「ァー、お疲れさんだー」
「あらあらまぁまぁ〜今年1年お疲れ様ですわ〜」
運ばれてきたグラスを手にすると、2人は乾杯をする。ぶつかり合ったグラスが、チン! と小気味の良い音をたてた。
「1年が経つのは早いですわね〜」
アイリスが言うと、マーサーもほんとになァ、と頷き返す。
「いやァ、しかしアイリスみたいな別嬪さんから誘われると嬉しいわねェ」
酒を口に運びながら、マーサーはご機嫌だ。
「賑やかで楽しいわねェ、流石はお祭りだー。ここも安い割に酒も中々美味いし、言うことなしだ」
「私〜砂肝が食べたいですわ〜砂肝〜」
アイリスは店員を呼び止めておつまみを注文した。
「折角のクロノス大祭なのでケーキも〜」
運ばれてきた料理をあれこれと美味しそうに食べるアイリス。それを見たマーサーは、
「ロマンチックとは程遠いけど」
おっちゃんそう言うの苦手だからねェ、と呟いてにひひと笑った。
「ま、世間話でもして、のんびり飲もうじゃないの。ペース上げるとおっちゃん潰れて寝ちゃうから、その辺ヨロシク」
「あらあらまぁまぁ〜」
ではのんびり、とアイリスとマーサーは酒や料理を楽しむことにした。
祭りの雰囲気もあってか、会話も弾む。
「今年は旅団で色々ありましたわ〜。ヤンデレって流行ってるのかしら〜うふふ〜」
「えー、そうなのかい? そうそう、そういえばねェ……」
「まぁまぁ、男性も大変ね〜」
互いに色んなことを話し、笑い合う2人。
その会話の合間に、ふとマーサーがアイリスを見やった。
「それにしてもアイリスの衣装ったらアダルティっつーか何ンつーか……。目のやり場に困るわァ、おっちゃんも若かったら堪らんだろうねェ」
アイリスの今日の装いは、スリットの入ったセクシーなドレスだ。それは彼女にとてもよく似合っており、またそのスタイルの良さを際立てていた。
「あらあら〜まぁ〜。うふふ〜ありがとうございますわ〜」
少し照れたようにアイリスが礼を言うと、マーサーははっとして付け足した。
「……あ、セクハラじゃないわよ。褒めたのよ、うん」
「あらあらまぁまぁ〜セクハラ〜? セクシャルハラスメント〜、罰金1万ダルクですわ〜」
アイリスはマーサー側にあるおつまみを奪おうと手を伸ばす。
「あっ、罰金とられたー」
「うふふふ〜」
そんな他愛ないやり取りもとても楽しい。
ひとしきり騒いでから、マーサーはグラスを取るともう一度アイリスの前に差し出した。
「取り敢えず今年も1年お疲れ様だー、来年も宜しくねェ。……って、こう言う時に使う言葉でもないか」
「いいと思いますわ〜。来年も宜しくお願い致しますわね〜」
アイリスもにっこりと微笑む。
賑やかな光の中で、2人はもう一度、楽しそうに乾杯をした。