■クロノス大祭『聖なる夜の夢』
テーブルに、並べられていく豪華そうな料理の数々を前に、シャポリエは血の気が引いた。「ナイフ握れどこれは値段を見れたもンじゃア無い」
そう低く呻いて、全く加減するつもりの無さそうなシヅマへ縋る様な視線を送る。
二人は高級な雰囲気漂うレストランで、窓際の席に座っていた。
ディナーの支払いはシャポリエ持ちということで、シヅマは次々と食べたいものを注文して、運ばれてきたのがこの豪華な料理だった。
ご馳走が食べれる、とシヅマはるんるん気分でナイフとフォークを使い料理に舌鼓を打っている。
値段を見るのが恐ろしい、と顔面蒼白になりながら、シャポリエはシヅマと料理を交互に見つめた。
送られてくる視線も気にせずに料理を堪能していたシヅマだが、ふとシャポリエと目が合い、口元をテーブルナプキンで拭った。
「何よそんな顔して、聖夜にこんな美女と一緒に過ごせるなんて最高に幸福じゃないの」
言いながら、首をかしげる。
窓から、金の砂と白い雪が舞う美しい景色を眺めながらのディナー。
確かに幸せかもしれないが、シャポリエは所持金を数えて不安になり、食事どころではない。
「――幸福なア、今日が幸福でも明日には綺麗さっぱり御先真ッ暗だッての!」
「明日からも、今夜の思い出を糧に生きてけばいーじゃない? あ、食べないんだったらそれ貰うけど」
言いながら、シヅマはシャポリエの分へ手を伸ばす。
「糧にすンにゃア短過ぎるしよ、後ステーキだけはやンねェぞ!」
シヅマは、残念と言いつつステーキ以外の料理を貰い、シャポリエに微笑みかける。
「一夜限りの幸福じゃ短いって言うなら、今度は一日かけて、もてなして頂戴な」
そんな言葉に、シャポリエは少し考えてから意を決した。
「んァ、――良し!」
そう言って先ほどまでの顔色の悪さを払拭する。
「良いだろう、いつも世話になッてンしなァ、何なりと?」
シャポリエが男らしく言い切ると、シヅマは瞳を輝かせた。
「良いって言ったわね? 聞いたわよ、絶対よ?」
シヅマの要求には遠い目で頷くも、どこか楽しげな表情のシャポリエ。
「男にゃア二言はねェともさ、財布次第で揺らぐけど!」
嗚呼、次はどうか安上がりでと、シャポリエが時計塔へ切実に祈る。
「約束だからね。その時までにしっかり稼ぎなさい!」
シヅマはそんな風に意地悪くしつつも、内心嬉しさと楽しさで幸せいっぱいだった。