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2人でクロノス大祭

レディハイウインド・ユリシーズ
アマキツネの・カケル

■クロノス大祭『まい おどる こんじき の ほし』

 金の砂がきらきらと舞い踊る。今日は特別な日。
(「金砂はどこから来て、そしてどこへ消えるのか……世界は果てしなく広くて不思議が沢山だけれど」)
 カケルは自らにエスコートされるユリシーズをチラと見る。
(「確かなことは、愛する人が俺の側にいてくれるということだ」)
「馴れないが……こんな素敵なレディのナイトとは光栄だよ」
 今日ばかりは互いに正装に身を包み、夢うつつの時間を過ごす。ユリシーズはカケルの腕をとったまま彼を見上げ、そして照れた笑みを返す。
(「今まで根本的には独りきりで生きてきたし、これからもずっとそうなんだろうと思ってた」)
 彼のことをいつから好きになったかなんて、もう覚えてない。でも、彼は夜空を駆ける流星の人だから……手なんて届かないと思っていた。きゅ、とユリシーズは彼の手を取る自分の手に力を込める。
(「今ではこうして二人で想いを同じにして、いつも一緒に居る」)
 愛する人が愛してくれる喜びを、誰に、何に感謝しようか?
 そっと腕を解く。だがそれは離れることはなく、形を変えるだけ。
「今日は素敵な時を過ごそう」
 どちらからともなく踏み出すそれはワルツのステップ。トントントンと三拍子をとって、くるくる、くるくる――。
 金の砂が降り注ぐ光景は酷く幻想的で、腕の中の愛しい人すら幻想なのではという錯覚に囚われかける。だが、それが幻想でないことを一番知っているのも互いで。伝わる温もりが、その証。
「カケル……」
 ステップを踏みながら、ユリシーズが呟くように呼びかける。ため息のように紡がれたその名には、溢れるほどの想いが込められていて。胸いっぱいの想いが彼女の瞳を潤ませる。
 彼に見つめられて、思いは募る。気がつくとユリシーズは、少し背伸びをして自分の唇でカケルの唇を塞いでいた。
 踊りの中のくちづけだから、触れたのは一瞬。カケルが目を見開いたのがわかる。
「……ユーリ」
 優しく名を呼んで、カケルは笑顔を返した。潤んだ瞳、募る思いは自分に向けられたもの。それがわかるから、いとおしさが募る。
 いとおしい、いとおしい、いとおしい――。
 夜空の星の如く降り落ちる雪と金の砂、そして揺れるランプの炎に照らされて、彼女の瞳は潤んでキラキラと輝いている。
(「吸い込まれそうだ――」)
 突然足を止めたカケルにユリシーズが不思議そうな瞳を向けるのを待たず、カケルは彼女を抱き寄せた。そして、触れる唇。
 何よりも優しくて、何よりも暖かくて、何よりも甘い――ユリシーズはゆっくりと瞳を閉じて、そのくちづけを受け入れた。

 ゆっくりと降り続ける金の砂と雪が、二人を祝福するように降り包んでいた……。
イラストレーター名:カス