■クロノス大祭『メリークロノス!』
(「今日はフアナちゃんを呼んで僕の家でホームパーティー」)「へへ、来てくれてありがとね」
ファルキーは部屋にフアナを案内しながら、はにかんだ。
「ファルさんのお家初めてぇ〜」
(「緊張するから、こっそり深呼吸」)
ファルキーが案内してくれた窓際のテーブルには、料理やケーキが並べられていた。
「それじゃまずはジュースで乾杯しよっか」
椅子に座ると、ファルキーは二人分のグラスにジュースを注いだ。
それぞれのグラスを手に持ち、少し高く掲げる。
「クロノス大祭おめでとう〜!」
「かんぱぁ〜い!」
フアナは笑顔でグラスを差し出し、触れ合ったお互いのグラスが良い音を立てた。
「いつも可愛いフアナちゃんに乾杯ー!」
続けて、ファルキーは先ほどよりも笑顔で言ってグラスを掲げる。
「っ、てぇ……な、な、……何に乾杯してるのぉ?」
かっと熱くなった顔を誤魔化そうと、フアナはグラスを顔の高さに持ち上げた。
「私だってファルさんの愛らしさに乾杯しちゃうんだから」
そんなやりとりをしつつ、二人でジュースを飲み、グラスを置いた。
「よーし、それじゃあカードゲームでもしようか。僕が勝ったら歌を1曲歌って貰うよ」
ファルキーはそう言ってカードを取り出した。
「カードゲームで私が勝ったらぁ、ファルさんのおっきい帽子が欲しいなぁ〜♪」
(「えへへ、冗談なのは内緒ぉ」)
分けたカードをお互いに見えないように手に持ち、順番に相手のカードを引いていく。
(「……ふっふっふ、このカード取れ取れ〜」)
ファルキーは心の中でほくそ笑みつつ、フアナに引かせたいカードを見つめた。
「最後の2枚はこっちを選んで勝負、ですぅ!」
ファルキーはカードを片付けながら、残念そうに言った。
「いっぱい食べていっぱい遊んで、もう辺りはすっかり夜だね」
「楽しい時間はあっという間ですねぇ」
フアナは食べ終わった料理の食器を重ねながら、名残惜しそうに頷く。
「えへ、楽しかったぁ! 今日は本当に有難うございましたぁ、えへへ」
にっこり笑うフアナに、ファルキーもにっこり笑う。
金の砂が夜空からきらきら降り注ぐのを窓から眺め、ファルキーは目を細めた。
「窓から見える今日の夜景は一人で見るより格段に綺麗に見えるよ」
フアナもファルキーと一緒に外の景色を見つめ、頬を染める。
「ファルさんと一緒に見るこの景色、私ぃずっと覚えてるぅ」
「僕、今日の楽しかった思い出を曲にしよっと。今日は本当にありがとね」
「曲が出来たら1番に聞かせて下さいねぇ〜♪」
おしまいに感じるもの悲しさは飲み込んで、フアナはファルキーに近づいた。
(「……最後にちょっとだけ、寄り添っても良いかなぁ」)
すぐ側に感じるお互いの温かさ。
ファルキーは寄り添ってくれたフアナへ、自分からもそっと寄り添った。