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2人でクロノス大祭

気分はもう休憩・エリアル
幸福な者・オルノース

■クロノス大祭『2人のカジノ遊び』

「よーし、祭りだ祭り!」
 オルノースは大きく腕を伸ばし、後ろにいたエリアルの頭を撫でた。まるで兄妹のように仲の良い2人を、祭りを彩る明かりが照らし出している。
「さて、エリアルはどこ行きたい?」
 せっかくの祭りなのだから、とオルノースが笑う。エリアルは少しだけ考え、口を開いた。
「私、カジノに行ってみたいです。連れて行ってくれる?」
「え?」
 返ってきた答えは、まさかの『カジノ』。驚くオルノースに、エリアルは穏やかに笑って見せた。
「お兄ちゃんがたまに話してくれるから、気になってたんです」
「ああ、話したことあったっけなぁ。俺はスキだからね、カジノ」
 自分の話す内容に興味を持ってくれたと知り、オルノースは嬉しくなった。自然と、行き付けのカジノへと足が動く――偶然にも、それは近場にあった。すっかり慣れた様子で店に入るオルノースの後を、エリアルが追う。
「あ、これがルーレットですか? ……楽しそう」
 ぴたり、と途中でエリアルの足が止まった。彼女の目の前で、金の装飾の施されたルーレットが回っている。所々にカラフルなコインが積まれていた。
「よし、今日はルーレットで遊ぼうか。たまにはカッコイイお兄ちゃんなトコロ、見せてあげるよ!」
 まだ何もしていないが、エリアルは本当に楽しそうだった。連れてきて良かったな、とオルノースは思う。どっぷりと浸かりさえしなければ、カジノは面白い店だ。
「良いか? こうやってやるんだぜ……っと、いきなり大当たり!」
「お兄ちゃん当たったですか? すごい! すごいですよ♪」
 賭けて、コインを積んで、また賭ける。今日は運が良いのか、コインの山はどんどん高くなっていった。
「こんなに勝ったのはヒサシブリだよー♪」
 喜ぶオルノースを、エリアルは素直に尊敬のまなざしで見つめていた。来て良かった、としっかり顔に書いてある。
「私も、やってみたいなぁ……」
「エリアルもやってみるの? よし、教えてあげる」
「え〜と、こう賭けるのかしら?」
 教えてあげる、とは言ったものの、先程からじっとオルノースの手付きを見ていたエリアルは十分ルーレットというゲームを理解していた。
「……ん?」
 いつの間にかオルノースの手も止まり、少し必死なエリアルの様子を眺めていた……というのも、先程から尋常でない勢いで彼女のコインが積まれていくからだ。
「……って、何かモノ凄いアタリ出してるよ!?」
「! あ、あれ? これって大当たり!?」
 言うまでもなく、最終的にはエリアルの方が勝ってしまっていた。前が見えない程に積み上がってしまったコインを見つめ、オルノールは苦笑いした。
「まあ、エリアルが楽しそうで良かった! ソレじゃ、大アタリのお祝いにオイシイモノでも食べに行こうか♪ 甘味食べ放題でも行く?」
「本当ですか? やった! お兄ちゃん大好き♪」
 ――――数時間後、とある店で仲良く甘味を頬張る2人の姿があった。
イラストレーター名:はしま