ステータス画面

2人でクロノス大祭

銀朱の魔弾・リディエル
漆黒の暗殺者・サーシャ

■クロノス大祭『来年も一緒に』

 雪の降る街を、1組の幼い男女が手をつないで歩く――否、見た感じだけでは、少年の手をひたすら少女が引っ張っているだけのようにも見えるが。
「さっちゃん! ほら、綺麗だよ!! 雪降ってる!!」
 少女、リディエルはどうやら雪が綺麗だと喜んでいるようだった。しかし、それに対して少年、サーシャはあまり興味を示していないように見えた。
「……」
「ねえ、さっちゃん!」
 サーシャは少しだけ、眉をひそめた。どうやら、何かが気に入らないらしい。
「ちゃんと……名前で呼べ。毎回言ってるだろ……」
「だって、さっちゃん雪が綺麗って言ってくれないんだもん!」
「……だ、だから……」
 彼女は、スカードであるサーシャのガーディアンである。そして、幼馴染という関係でもあった。長い付き合いだが、何度言っても直らない『さっちゃん』という呼び名――諦めたのか、サーシャは軽くため息を付いた。
「今度はあっち行こうよ!」
「……」
 それでも、2人は何だかんだ言って仲が良かった。しばらくの間、サーシャの手を引き、リディエルは無邪気に街を歩く。しかし、雪は決して綺麗なだけのものではない。
「……さ、寒くなってきた……」
 ぶるり、とリディエルは身体を震わせた。当然であろう。雪はそもそも冷たい物なのだ。
「! ……お、おい……っ」
「良いじゃん、少しだけだ!」
 もぞもぞ、とリディエルはサーシャの上着に潜り込んだ。対するサーシャは、最初こそ困惑していたものの、またしても諦めてしまったようだ。
「…………」
 サーシャはため息を付きつつも、リディエルを無理矢理上着から追い出すような真似はしなかった。
「えへへ、ありがと♪」
 リディエルは満足げに笑い、サーシャをじっと見上げていた。
「……」
 最近は随分と、サーシャも穏やかな表情をするようになったものだ。昔からではあるが、彼は難しい顔や苦しげな表情を浮かべていることが多かった……それなのに、近頃はそうでもない。リディエルは、少しだけ安心した。
「ずっと一緒に居るから、約束ね」
 リディエルはそっと、サーシャの頬に口付けた。彼女が口に出すことは無かったが、それはこれからもずっと一緒に居たい。そんな、約束の意味の込められたキスだった。
「り、リディエル……」
 サーシャは一瞬、驚いて目を見開いていた。だが、彼はすぐに、微笑みを浮かべ――リディエルの額にキスをした。
「さっちゃん大好き♪」
「さっちゃんって、呼ぶなよ……」
 少しだけ顔を赤くしていたが、余程嬉しかったのだろう。リディエルは花が咲いたような、愛らしい笑みを浮かべ、サーシャに更に強く、抱き付いた。

 純白の雪が、静かに降り積もる――今年の冬は、リディエルがサーシャのガーディアンになって迎える初めての、特別な冬であった。
イラストレーター名:楽