ステータス画面

2人でクロノス大祭

狂咲の夜桜・リーゼロッテ
鞘絵の暁天・サーシス

■クロノス大祭『The Second Snowy Day』

(「せっかくの機会です、最大限におめかししてみましょう」)
 リーゼロッテは装いながら、思った。
(「変じゃないと、いいな……」)
 眼鏡を外して髪もおろし、仕上げにサーシスからもらった赤いバラの花を髪にさす。
 待ち合わせの場所には、サーシスが先にいた。リーゼロッテがいつもと違う装いであることに気付く。
 リーゼロッテの白い肌に銀色の髪、雪景色の中でサーシスの選んだバラはとても綺麗で、よく映えた。サーシスの方はいつものコートを忘れずに、紳士を気取ったような格好だ。
「早く着いたはずなのに私の方が後でしたね」
 謝罪するリーゼロッテにサーシスは「いいえ」と笑う。
「似合ってますよ」
 サーシスの称賛にリーゼロッテは頬を染めた。気恥ずかしさを振り払うように「ささ、行きましょうか」と誘うリーゼロッテに、サーシスは手を差し出す。
「さあ、お手を」
 その手と顔とを交互に見るリーゼロッテに、サーシスは続ける。
「エスコートしましょう、僕のお姫様。……こんなおじさん紳士で良ければ」
 おじさんなんてそんな、とリーゼロッテは頭を振り、サーシスの手に自らの手を載せる。
(「アクエリオで出会ってから――まさかこんな関係になるとは」)
 重ねられた手に、サーシスは意識せず目を細めた。
「今日は目一杯楽しんでいただきますよ、お姫様」

 サーシスの手に引かれ買い物がてら、夜の街を二人で歩いた。リーゼロッテはそっと隣を見上げる。
(「夢にまで願った事が叶いました……」)
 全てを失ったリーゼロッテに、『道』をくれたサーシスに最大限の感謝を。
(「初めてお会いした時もこうして引っ張ってくれたのですよね」)
 サーシスの手は大きくて暖かくて、握っているだけでどこか安心できた。それは、今も同じで。
 その想いが伝わったかのように、サーシスの手に力が込められる。
「あなたの手はとても繊細で――さもすれば消えてしまいそうですね」
 呟くようにサーシスは言った。どちらからともなく足を止める。
「だからこそ、僕がしっかりお守りしましょう」
 サーシスの目が、リーゼロッテの目を見据えた。
「ガーディアンとして、それから、もっと大切な存在として」
 視線も言葉も、まるで心臓までつかむようだった。リーゼロッテは意識せず息を吐き出す。
「……故郷からはもう遠くに着てしまいましたが――貴方とならば大丈夫、です」
 応じたリーゼロッテに、今度はサーシスが息を吐き出した。
「ねえ、リーゼロッテ」
 改まって名を呼び、リーゼロッテの頬を包むように触れた。
「ここで抱きしめてはいけませんか?」
 そう言ったサーシスにリーゼロッテは「……ここでですか?」と控えめに問い返す。言葉ではなく微笑みで応じたサーシスに、リーゼロッテもまた、微笑みで応じた。
「……喜んで」
 リーゼロッテの答えに、サーシスは小さな体を抱きしめる。
 抱きしめられたリーゼロッテは目を閉じて、サーシスに体をあずけた。
イラストレーター名:kai_love_s