■クロノス大祭『Gestandnis〜告白〜』
「今お時間大丈夫ですか? 外にご一緒したいのですが……」クーネラリアがムルムクスに声をかける。
今日この日に、以前から思っていた事を伝えるべく固い決意を胸に秘めて。
外は雪が降っており、肌寒い。その雪と共に舞う不思議な金色の砂。
今日は年に1度のクロノス大祭。
ラッドシティの中心にある巨大時計から『幸せな恋人たち人形』や『愉快な楽隊人形』が現れ、美しい音楽を奏でる。
そして、このお祭りは『時計塔の下で、好きな人に告白するお祭り』でもあるのだ。
だからクーネラリアは一大決心をした。
金と白が舞う不思議な光景の中2人並んでゆっくりと歩く。人通りも少なく、賑やかな声もどこか遠い時計塔への道。
「寒くないか?」
「少し寒いですけど……大丈夫です」
自分を気遣うムルムクスの声にクーネラリアは、にこっと微笑む。両親を不幸な事故で亡くしたクーネラリアの親代わりでもあるムルムクスは優しい。
ふとクーネラリアが足を止めた。ムルムクスも、どうかしたのかと立ち止まる。
「いつも助けていただいたり、一緒にお出かけしたり、ありがとうございます」
立ち止まって一呼吸おいたクーネラリアが微笑んで日頃の感謝の礼を口にした。
「いえ」
ムルムクスは謙遜しながら不思議そうな視線をクーネラリアに向ける。
改まって礼を言われるような特別な事はしてないと思ったが。そんな不思議な瞳。
クーネラリアは、不思議そうにしているムルムクスに、ほんの少し怯んでしまった。
(「やはり……私は『娘』なんですね……恋愛の対象ではないから……でも……」)
常に持っている大切なくまのぬいぐるみのレイナードをぎゅっと抱きしめる。レイナードから勇気を貰うように。
「私、ずっと前からムルムさんのことをお慕いしていました」
思い切って口にしたクーネラリアの好意の言葉。
「……」
ムルムクスは、その言葉に無言のまま瞬きをしつつクーネラリアを見つめる。驚きに言葉を紡げないのかもしれない。
「私のこと、恋愛の対象でないと……わかっています。それでも、ずっと伝えたくて……困らせてしまうかもしれないけれど」
瞬きをしながら自分を見つめてくるムルムクスを真っ直ぐ見つめ、一度言葉を区切って、
「私は、ムルムさんが好きです」
自分の想いを伝えた。