■クロノス大祭『- Lost Control - Please say "I love you"』
クロノス大祭。その宴の後、降りしきる金の砂と白い雪が、街を幻想的に彩っていた。正装のまま自室のテラスから城下を眺め、会場になかった姿を夜空に求めるリョクエン。
月夜を見上げていると、窓から侵入してくるよく知った影。
「来ないと思ってた……」
「こんな夜に、お前を一人にする訳ねェだろ?」
「来るのが遅いぞ……ばか」
にやりと犬歯を見せるディアに、リョクエンが少しすねた声を出す。
乙女の寝室に上がりこんだディアは、着飾ったリョクエンの美しさに見惚れ目を細める。
しかし思い至るのは、愛しい姫君の姿を自分以外の男も見ているだろう事。
嫉妬心が湧き上がり、責める様にリョクエンをベッドへ追い詰める。
「……誘ってンのか? 俺に会う前に」
「違……、だって今日は祭りだから……」
「だから? そんな美味そうな恰好でフラフラしてた訳だ?」
「何言ってんだよ、これは俺の国の正装だぞ……っ」
少し恥ずかしそうに胸元を隠すリョクエンの腕を取り、振り向かせるディア。
「……堪らなくなるな。こんな恰好」
呟いたディアは、リョクエンをベッドへ押し倒す。
竜と狼の血を引く乙女は、驚きつつ僅かな抵抗を見せる。
もみ合ううちに靴が片方脱げ、スカートが少しめくれ――。
「…………」
ディアは相手の脚の間に身体を滑り込ませ、じっと見下ろす。
リョクエンは動揺した眼差しで見上げ、少し震える。
「…………ばか」
秘めた思いを抱いたままぽつりと呟やき顔を背けるリョクエン。
「お前は、……それでも?」
「……うん……」
「俺でも良いのか?」そう言外に呟くディアに、リョクエンは頷きを返す。
「お前、こそ……」
「――今更」
見上げてくるリョクエンの指を咥えて舐め、笑みを浮かべるディア。
「……ん」
恥ずかしそうに見つめ、嬉しそうに微笑するリョクエン。
笑いあい、重なる影。背後には音も無く降り積もる金の砂。
白く穏やかに輝く月に見守られて、二人の夜はゆっくりと更けてゆく。