ステータス画面

2人でクロノス大祭

そこら辺にいるデモニスタ・ラスター
どこにでもいる星霊術士・ヴィース

■クロノス大祭『どこまでも続く、二人のMerry go round.』

「待たせちゃった?」
「大丈夫。今、ついた所です」
 雪と金砂の降る時計塔広場へ、特注の衣装を着て走り来たラスターを、ヴィースは小さく手を振って迎える。少年の額の汗をヴィースがハンカチで拭いだすと、ラスターはされるがまま、どこか上の空で口を開いた。
「あのさ、いつもと雰囲気の違う服、だよね」
「はい。折角のお祭りですから」
 ヴィースは空いた手でコートの袖を掴み、横に広げる。いつもの服とは違うデザイン重視の作りで、自分のカラーとはズレているかなと、少し心配をしていたものだ。
「その、変じゃないですか……?」
「う、うん、凄く似合ってて……」
 なんて言われて、ヴィースの内心が喜びに満ちてしまう所に、ラスターがハンカチを持つ手に触れてきた。汗は大丈夫かな、と引っ込めようとした時、触れ合った手から、ラスターの声にならない言葉が――マインドによる伝心が流れてくる。
「あ、えと、その、『綺麗過ぎて困る』、って」
「……そうだよっ」
 そして、二人して同時に顔を赤くして、お互いが照れ隠しのように、パートナーの腕を引き寄せた。

 ずっと止まらぬ時計の下で、二人は相手の歩みを追った。
 押しては戻る流れの中で、リズムを見つけて想いを乗せる。
 伴奏も無い音楽に、ゆったりと身を任せて巡り、身の入れ替えに抱き寄せて……。
「あの、言いそびれて、たんですけど」
「うん、どうしたの?」
 どれだけ時が経った頃か、いつの間にかダンスになった動きの中で、ヴィースは正直な所を打ち明けた。それは、彼を一目見た時からずっと思っていたことだ。
「その、うさ耳とかっ、可愛くて格好いいので、触って、もふもふしていいですか?」
「ええっ? や、うん、それは願ったり叶ったりと言うか」
 ラスターにもまた、いつもと違うヴィースの姿を見てから、抱きついて撫でられたいとか、そんな衝動があったのだ。渡りに船とでもいうように、ラスターはヴィースの申し出を快諾した。
 そして、ヴィースはラスターの衣装を堪能し、えへへ、と微笑を浮かべる。
「もう少し、いいですか」
 と問いかけてくるのを、ラスターは流れのままに受け止めて、ヴィースはラスターの頭を……と思わせて、頬に、そっと口付けを送った。
「ヴィース……」
 どこか遠くの空に、大祭の終わりを告げる鐘が鳴るのが聞こえる。悪戯を仕掛けておきながら、顔を真っ赤に染めたヴィースを抱き寄せて、ラスターは悪戯返しにささやいた。
「最後はやっぱり、さ」
 口付けには口付けを。ただし、同じ箇所にではなく。
 お互いに唇を離せず、ラスターはマインドで言葉を送った。
「今年も、一緒に居られて嬉しかった」
 そして、願った。
「また来年も二人こうしていようね」

 ――かちかちまわれ、大時計、白い雪をも振り散らし。
 くるくるまわれ、夜の星、金の砂とのステップに。
 人は祝いと喜びに、時と風を巻き込んで、手に手を取って踊っては、特別な夜を奏でてく――。
イラストレーター名:上有