■クロノス大祭『金砂と白雪と秘密の翼』
日が落ち、フェルトフェルタの時計塔広場ではお祭りが始まろうとしていた。それは、この街で語られるある物語の靴を模した真白な翼飾りの靴を履き、華やかな賑わいの中で秘密を打ち明けて楽しむお祭りだ。
空からは、金の砂と白い雪が舞う幻想的な夜。
時計塔のカラクリが陽気で軽やかな音色を奏で始める。
あちこちにある可愛い森梟の形をしたランプに蜜色の明かりが灯され、人々は真白な翼の飾りがついた靴を履いて時計塔へ向かう。
シアとアイシャも、真白い翼飾りの靴を履いてお祭りに参加していた。
街の通りや広場では、真白な翼飾りの付いた銀色のゴブレットで、林檎果汁入りホットジンジャーエールが振舞われている。
二人はそのゴブレットを手に、広場の一角に座った。
時間ごとに現れる時計塔のカラクリだけではなく、広場では本物の楽士達が陽気で軽やかな音色を奏でてくれ、それに合わせて踊る人々。
音楽と楽しいダンスの合間に、ひとびとの間で囁き交わされる楽しい秘密を聞きながら、シアとアイシャはお祭りを楽しんだ。
シアは、隣に座るアイシャをちらっと見て、すぐに手元のゴブレットに視線を戻す。
シアにとってアイシャは、仲良しで、守りたい大切な人だ。いつの間にか、大好きになっていた。
(「これも秘密の内か?」)
伝えようか。そんなことを心の中で考えてから、賑やかなお祭りの雰囲気と、ゴブレットの中で跳ねる気泡が心を弾ませる。
(「とりあえず、全力で楽しむ!」)
シアを見つめ、アイシャは感謝のきもちでいっぱいだった。
(「シアは、いつも守ってくれる……大切な人」)
けれど、面と向かって伝えるのはちょっと恥ずかしい。照れ隠しからアイシャは、大好きなお菓子の話をする。
アイシャの話に、シアは瞬きをしながら真剣に相づちをうってくれた。
「シアと一緒にいると、心も……身体も、暖かくなる……ね」
銀色のゴブレットに注がれた、ホットジンジャーエールを飲んで、一休み。
「え、ああ。……うん」
(「急に言われると照れる。俺も同じだけど」)
シアも、隣に座る大切な人のおかげで、身体と心が温かい。
「俺たちの秘密も言い合ってみるか?」
心臓の鼓動が早くなる。
「秘密……? んー……わたしの秘密……はね……」