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2人でクロノス大祭

菟白雪吻・リーフ
狂彩灰狼・ズィヴェン

■クロノス大祭『金雪傍観 ‐Goldener Nachmittag‐』

「ぉ、まだ祭りヤッテル」
「やや未だ灯が沢山あるもので」
「……アァいイ景色だ」
 眼下に見える町の灯に、リーフはおもしろそうに笑みを浮かべ、ズィヴェンは目を細めて小さく息をつく。
 今日は年に一度のクロノス大祭。
 大きなことも小さなことも、いくつもの出来事があったこの一年。
 その締めくくりとなる祭りに、町は活気に満ちている。
 そんな町の灯を見つめて、
「――まあ賑わってないとこんな事出来ませんよねえ」
「苦労シテ文字盤開けた甲斐アッたな?」
 どちらともなく顔を見合わせて、2人は悪戯っぽく笑いあう。
 今、彼らがいるのは町を見渡す時計塔。
 普段ならそうそう入り込めない場所だけど……町の人たちがお祭りを楽しんでいる隙になら、こっそりと入り込んで文字盤を開けることもなんとかなった。
「さ飲もうぜ、酒は沢山アルんだ」
 傍に座ったコヨーテを撫でつつ、ズィヴェンが差し出したグラスをリーフも受け取って、
「叱られたら酔払いの仕業と云う事に」
 と、笑って2人はグラスを軽く打ち鳴らす。
 そのうち誰かに見つかるとしても、それまでは2人だけの夜景の特等席。
 遠くから聞こえてくる祭りの喧騒と夜景を肴に、2人はグラスを傾け言葉を交わす。
「白と金ノ、雪か」
「金ぴかじゃ風情も無いと思いましたが、こう云うのも何とも綺麗で!」
 町の灯の中に舞い降りてゆく白の雪と金の砂。
 一年に一度しか見ることの出来ないその光景をリーフは興味深げに見つめ、
「んな雪見酒がお前と出来るナンザ……」
 そんなリーフに視線を向けて、ズィヴェンは感慨深げに呟き……小さく身震いする。
 ここは町を見渡せる時計塔であり、それなりの高さがあるだけに風も地上よりも強めになる。
「テか寒クないか?」
「――ん? まあ少し」
 ズィヴェンの問いに、リーフは首を傾げつつそう答えて……。
「――」
 ふわり、と首に巻かれた暖かな感触に瞬きひとつ。
 リーフの首に巻かれたのは、ズィヴェンの首に巻かれた長いマフラー。
 つまり、今の2人は1本のマフラーを共有している状態となっているわけで……。
 しばし言葉を無くして瞬きしていたリーフだが、状況を理解するにつれて徐々にその頬は緩んで行き……。
「……ねえ師匠これッてまるで!」
「見ルな、凄く嬉しそうナ顔スンナ」
 リーフの笑顔から逃げるようにしてズィヴェンは視線を雪空へと向け、そんなズィヴェンにリーフは思わず笑みを零す。
「ねえ若しかして照れてます、自分でした癖に?」
「うっせそれ以上言うト狐耳へし折ンぞ」
 そんなズィヴェンの脅しにも、リーフは怖い怖いといいつつも笑顔で顔を覗き込んできて、
「……もう何だか寒くネェしマフラー取ろうかナ」
 その顔から視線を逸らしつつ、ズィヴェンはマフラーに手をかけて……。
 リーフの笑顔にちらりと視線を走らせると、軽く息をついてそのまま手を下ろす。
「まァ、も少しダけコノママデもいいが」
「嗚呼ほんと――あっつい、な」
イラストレーター名:朱夏和