■クロノス大祭『金色の降雪、同じ空の下で君を待ち』
鏡の前で身なりを整えたアムオスは、帽子をかぶって外へ出た。空からは、金の砂と白い雪が舞っている。今日は一年に一度の特別な日だ。
シェキーラと結婚してから、一緒に過ごす日々は幸せそのもの。
いつも一緒だが、今日は別々に出発して待ち合わせデートをすることになった。
アムオスは、待ち合わせ場所へ向かいながら、空を見上げた。
(「いつも俺は大怪我を負ったり……アクスヘイムに残ったりと君を待たせてばかりだったね」)
これまでの事を思い出すと、少し申し訳ないような気持ちが胸の中にわきあがる。
(「だから今日はいつも君がどんな気持ちで待っているのか知りたくて、待ち合わせの時間よりも少し早く来たんだぜ」)
約束の場所が見えてくると、アムオスは愛しい人のことを想った。
(「どんな服で来るだろう。先に来ている俺を見つけ、駆け寄ってくる君に、俺も今来た所だよって言おうか」)
そんなことを考えながら時計を見ると、待ち合わせにはまだ少し早い時間だった。
出かける支度をしながら、そういえばとシェキーラは思い出した。
(「去年のこの日にアムオスからプロポーズされたのよね」)
その時に見た美しい光景を思い出し、ため息をつく。
あの日からシェキーラは、アムオスの帰る場所になると決めた。
旅人の道標、同じ場所で輝く星のように待つことを。
(「貴方がもう二度と寂しさを感じないように」)
シェキーラは時計を確認し、上着をはおって外へ出た。
金の砂が輝きながら白い雪と舞う空。
アムオスも今、同じ景色を見ているに違いない。
(「貴方はちょっとニブくて、私の気持ちになかなか気付いてくれなかったし、結婚してからも大怪我して心配ばっかりさせられてるけど」)
シェキーラはふふっと微笑みながら歩く。
(「だから今日はワザと時間に遅れて行くわ。ほんの少しね。私を見つけて、嬉しそうな顔で笑う貴方を見たいから」)
少しだけ遅れて約束の場所へ着いたシェキーラは、アムオスを見つけて駆け寄った。
アムオスは笑顔で迎え、今日は冷えるからと自分のコートをシェキーラにかける。
「さぁ、時には恋人同士に戻ってデートしよう。とっておきの店をサーブしてあるんだぜ」
アムオスはシェキーラの手をとり、寄り添って歩き出した。