■クロノス大祭『――Ich verspreche ewige Liebe hier.』
「ホント綺麗ですね」不思議な空模様を見つめながらナナセが呟く。
戦い続く日常、そんな中に訪れたお祭り騒ぎ。楽しいだけではなくて、神秘的な世界も見せる光景に心打たれるのだろう。
彼女の横顔を見つめながら、ウォリアは機会を伺う。
ポケットの中に忍ばせた手が、何度も小さな箱を確かめた。
「どうしたんですか?」
視線に気づき、ナナセは彼の方へ顔を向ける。
時計台の真下、ちょうど2人しかいないこの瞬間がチャンス。
「ふふふ、ナナセにプレゼントがある。当ててみるが良い」
仕舞いっぱなしだった右手を抜くと、手に握ったプレゼントを彼女の手へ。
「……プレゼント?」
フェルト生地に包まれたケース、掌に届いたそれをキョトンとしたまま見つめる。
はてと首を傾げれば先ずは振ってみる。何も音はしない。
匂いはどうだろう? 嗅いでみるも、よくわからない。
小動物のような仕草に、見守るウォリアが小さな微笑を零す。
「ん〜……降参です、答えは?」
少しだけ頬を赤らめ、口を尖らせて答えを求めると彼の手が伸び、彼女の手の上で蓋が開かれる。
「我が一部を持って、ここに永久の愛を誓う」
指輪だ。
小さな輪の上に細かな装飾が並んだそれを見つめ、ナナセの時が一瞬止まる。
再び時が動けば、言葉の意味と指輪の示す先を理解し、一気に鼓動が加速していく。
「はい……永久に、貴方の傍に。この愛と、魂に誓って」
声が震えぬ様に搾り出した言葉を届けるも、待ち望む何かが起こらない。
「ところで、コレはどの指に付けたら良いんですか? 親指には小さいですし、小指だとぶかぶかですし」
そして、ゆっくりと左手を彼に差し出す。
「付けて?」
意地悪に強請るけれど、その心はきっと逆。
最後まで全部、貴方の手で奪われたい。
知ってか知らずか、ウォリアはグッと彼女の体を引き寄せると、驚いても問答無用に唇を押し付けた。
重なり合う唇、緩慢な動きで何度も重ね直しては、求める様に唇を柔らかく啄ばむ。
40cmもある身長差に、上を向いて背伸びして……けれど、心地よさに緩めてはいけない。
キスだけにナナセの意識が集中する最中、そろそろと彼の両手が動き、宙で放置された細い左手に絡む。
唇はそのままに、白い左指へとリングが滑り込んでいくのだった。
「……むぅ、俺にこんな事させられるのはオマエだけなんだからなっ」
唇が離れ、ウォリアの照れ隠しにナナセが目を丸くする。
「さー、一日遊び倒すぞ」
誤魔化す様にささやいた言葉に、彼女も微笑を浮かべて頷く。
「ほーい、一日パーッと遊び倒……って!?」
続きは夜になどと言われ、頬が一気に紅潮していく。
そんなに名残惜しそうな顔をしてしまったのかと思えば更に恥ずかしくて、俯きながら彼の手をぎゅっと握る。
今日は年に一度の祭、けど2人の思い出はこれからもずっと紡いでいけるから……。
続きは後で。