■クロノス大祭『永遠の愛を誓って』
シュビィはベッドから見える夜景を眺めていた。夜も遅いこの時間、明かりはまばら。
けれど、明るく見えるのは、きっと、空から舞い降りる雪のせいだろう。
「……綺麗ですわね」
静かに呟く。
今は、一人。けれど、一人ではない。部屋から少し離れたシャワールームには、シュビィの想い人、ニコラがいるのだから。
そっと、窓を指でなぞる。そのなぞったあとだけ、くっきりと線に残る。描いたのは、愛を示す可愛いハート。
なかなかの出来栄えに思わずシュビィは笑みを浮かべた。
「待たせてしまいましたか?」
タオルで頭を拭いているニコラが入ってきた。
「いいえ、綺麗な夜景を見ておりましたから」
ベッドの上で、シュビィは顔を綻ばせる。その笑顔にニコラもつられて笑みを浮かべた。
ニコラは髪を拭き終え、そのままベッドに近づいていく。
ぱさりという音と共に、ベッドの近くにあった椅子の背に、着ていたバスローブを脱いで掛けた。
ぎしりと、ベッドが軋みを上げる。
二人分の重みが掛かるベッドの上には、ニコラとシュビィが肌を寄せ合っていた。
また、ベッドが軋む。
シュビィは願うように想う。
ニコラとの誓いの夜。
二人でゆっくりと大切な夜を過ごしたいと。
互いの手を重ねて、その温もりを確かめ合うように、愛おしそうに。
「ニコラ、これからもずっとずっと……側にいてくださいませ」
そっと口付けを交わして。
「一生一緒ですわ」
嬉しそうに微笑んだ。
「もちろんです」
ニコラも微笑む。
「二人でずっといられるように」
今度はニコラから口付けを交わす。
それは、誓いの証。
刻み込むように、その幸せの証を重ねてゆく。
雪の降る夜。凍えるような外だけれども。
この二人の部屋の中は、互いの熱で暖かく、いや、熱く感じていた。
蕩けるような甘い、甘い、小さな誓い。
大切なクロノス大祭の夜は、二人にとって特別な日になった。
互いに誓った、その言葉と約束。
それは、永遠に消えない確かな記憶ともに、心の中でずっと……。