■クロノス大祭『voorstellen‐聖誓‐』
夜、空から黄金の砂と白い雪が降る町を、ニクスとスピネルは一本のマフラーをお互いの首に巻いて、手を繋いで歩いた。ニクスはスピネルと手を繋いでいることに少し照れて、それを隠すように笑う。
「ははは、こうやって堂々と手を繋いで歩くのは、照れるな」
その言葉に、スピネルも頬を染めて繋いだ手を見下ろし、軽く握り締めた。
「そうだな……でも、暖かい、な……」
照れつつも嬉しそにそう答える。隣に大切な人の温もりがあるから、寒さも気にならない。
二人はしばらく、周りの景色を眺めたり、話をしたりして歩いた。
黄金の砂と白い雪が舞う様子はとても美しい。
スピネルは、ニクスが案内してくれる街並みを楽しみ、こうして一緒に居れて幸せだと感じていた。
「ちょっと楽しい場所があるんだけど、行ってみないか?」
町の雰囲気を精一杯味わった頃、ニクスは事前に調べておいた景色が綺麗な高台へスピネルを誘った。
頷いたスピネルの手を引き、ニクスが向かったのは人気のない高台。
(「楽しいところがあると誘われたが、人が少ないな?」)
スピネルが不思議に思っていると、ニクスはスピネルの手を放し、何かを取り出した。
それは指輪だった。
スピネルが顔を上げると、真剣な表情をしたニクスと目が合う。
「俺と最後の瞬間まで最高に楽しい人生を一緒に歩もう」
ニクスはそう言い、スピネルの手を取った。
(「心に響くような言葉はいえないけど」)
ニクスは精一杯心を込めてスピネルを見つめる。
「結婚しよう、スピネル」
言葉とともに、指輪をスピネルの薬指にはめ、プロポーズ。
スピネルは、いきなり指輪を渡されて驚いていた。嬉しさと照れとで、顔を赤らめる。
(「言われた言葉で顔が、熱い、な……」)
上手く返事が言えなくて、泣きそうになりながら、それを隠すように気持ちを込めてニクスに抱きつく。
「ニクス、ありがとう……僕も、もっと……ずっと、一緒に居たい」
少し声が震えた。
「これからも、側に、居て欲しい……」
スピネルはそう言って身体を離し、しばらく見つめ合う。そして、二人で寄り添って笑い合いながら、夜景を眺めた。