■クロノス大祭『ふたりのアリス』
大変たいへん!クロノスが時間を持ってっちゃった!
白いうさぎがぴょんぴょん跳ねて、先を行く。
「クロノス待ってよーう!」
それを追いかける、青いエプロンドレスの少女。
「君も、待ってよー……」
そして彼女を追いかける、少年。
「はっ! がんばってアリスティドー!」
でもごめんね、足を緩めるわけにはいかないの。不思議な物語の始まりを見失っちゃいそうでしょ?
ねえ、こんなおとぎ話、あったよね? ふたり、あの主人公みたいだね。
あなたもそんな素敵な世界の幕開け、見失いたくないでしょう?
だからほら、そうだ、いいこと考え付いた!
「一緒に手繋いで、追いかける?」
それならふたり、はぐれないね。
白い指先伸ばして、互いに絡めて。
大きく一歩、ふたりで笑顔を見合わせて。
「「待ってよー……!」」
「クロノスつまえたー!」
やぁっ、と捕まえた白いうさぎは、ふかふかであったかくて。
カムパネルラはその頬をつんつん、突っついてみる。
うさぎはくすぐったそうに目を細め、その様子に思わず彼女もそのふかふかの頬に顔を寄せた。
あのおとぎ話のうさぎさんを捕まえた少女も、こんな風にしたのかな。
「ふふ、雪みたいにもふもふー」
嬉しそうな彼女を逆側のクロノスの頬をつんつんしながら見ていたアリスティドは、カムパネルラの肩を軽く叩いて彼女を呼ぶ。
「ねえ、僕も君をつかまえた、よ」
まあ、彼女に手を伸ばしてもらって、だけど。ふたり一緒だったから、白いうさぎも捕まえられた。
そっかと彼女は大きな瞳をぱちくり。
それからえへへと笑み崩れて。
「ネルもつかまっちゃった。ふふー、ご褒美、ご褒美ー、目つむっててねぇ」
大人しく瞼を下ろす彼の掌を取って、ころんと載せるは、あまいあまいクロノス型の白いクッキー。
「ネルの魔法」
あなたに笑顔を届ける魔法。
効果は抜群、彼は嬉しそうに赤い瞳を和ませた。
それを見つめて、カムパネルラもとろけるような、笑みを返す。
アリスティドにつかまっちゃったのは、白いうさぎみたいに気ままなネルの心!
いつでも素敵で楽しい物語を紡いでいきたい、そこにあなたを招待したいの。
だからアリスティド、あなたもネルを、追いかけてね?
ほらやっぱりわたしたち、ふたりともあの物語の主人公だったみたい!