■クロノス大祭『暖かい雪』
不思議な金色の砂が舞い、空を黄金に染める。黄金の空からは純白の雪が降り注ぐ。年に1度しか見られない光景の中、一緒に新たな思い出を作る為に、クロイツとアルチェステラは仲良く並んで歩いていた。
今日の夕飯はどうしよう、ケーキはどんなケーキが食べたい等そんな他愛のない会話をしながら幸せそうに。
(「ステラ可愛い……」)
クロイツは目尻を下げて横を並んで歩くアルチェステラを愛おしそうに見つめる。
ふと、寒くはないだろうか、そんな考えが頭に浮かんだ。すっと自分のマフラーを外してアルチェステラに巻く。
「それじゃクルツが寒いよー」
マフラーを巻かれたアルチェステラがクロイツを見上げて心配そうな顔をした。
「俺は寒いの平気だから」
にこっとクロイツが笑う。しかし、いくら平気だと言っても雪が降るくらい寒いのだ。マフラーを巻いてもらったアルチェステラの心配そうな表情は消えない。
(「クルツが風邪引くのはボクもいやだもん」)
「あ! 一緒にマフラー巻けばいいんだね! そうすれば二人ともぽかぽかー」
良い事思いついた! と言わんばかりにアルチェステラの瞳は輝いた。
(「何この天使。何この可愛い生き物。幸せすぎてやばい」)
今にも、興奮で鼻血を吹きながら抱きしめてしまいそうになるクロイツ。
「あぁ……うん。じゃあ、一緒に巻こうか」
必死に冷静を装って笑顔で同意した。
クロイツが巻いたマフラーをアルチェステラが一度解き、片方を長くして短い方を巻き直す。長い片方をクロイツに渡し、受け取ったクロイツは渡された長い方を自分に巻いた。
(「いつもよりもクルツが近くてちょっとどきどき……」)
(「きょ、距離が近すぎて……すごいドキドキする……」)
1本のマフラーを2人で巻くというのは、当然密着しなければ巻けない。その距離にお互い真っ赤である。2人とも緊張してしまって何を話していいか分からなくなって暫し静かになった。
その時、アルチェステラの手が握られ、そのままクロイツのポケットの中へと招待される。
「寒そうだったから……」
顔を真っ赤にしたクロイツが、アルチェステラがいるのとは反対の空を見ながら――いや、目を泳がせながら言い訳をした。
(「恥ずかしくて顔見れん」)
そっぽを向いたまま耳まで真っ赤になったクロイツ。
(「うぅ……! 恥ずかしいけど、恥ずかしいけどでも……!」)
「クルツ大好き!!」
アルチェステラはぎゅっと抱きついた。
更にクロイツの顔が真っ赤になったのは言うまでもなく――。