■クロノス大祭『心からの贈り物』
「好、甘いケーキか、辛い終焉か、選ぶよろし」と、にっこり迫る易商・ビリー。相手にとっては鬼気迫る顔に見えるっぽいが、気のせいだろう。そういう事にしとけ。
「ケーキひとつで、今夜の安全も買えるんだ。安いものだろう? うん?」
と、どでかいケーキを売りつけるは、悪貨・コール。
サンタコスプレで、ケーキ売りのバイトを見つけてきたのは彼女。ビリーとコールの女二人、手元に金無し、男も無し。つーか金が無いなら稼ぐっきゃない。
つーわけでバイトしてるわけですが、リア充どもの幸せそうな様子見ると「爆発しろ」とばかりに嫉妬全開。こういう連中にこそケーキを買わせるべき。
「なーに、ちょとばかり積極的に売りつける、大丈夫あるよ」
「だよなあ。ちっと迫るだけでは、恐喝などとは言わねーよなあ」
その理屈はおかしいとツッコミ入れられず、二人は手近の不運な二人組に、邪悪かつ凶悪かつ性悪なスマイルで迫った……。
……のだが、ビリーはそのカップルの瞳に見てしまったのだ。
不幸なエンディングを。
これは大変、ならば助けないと。
というわけで、哀れなカップルから了承の言葉を(無理やり)もらい、とっととマスカレイド退治にレッツゴー。
マスカレイドとの戦いは、まさに死闘。
なかば八つ当たり気味に、戦いの最中「リア充爆発しろ」「自分たちより幸せな奴らはやな奴だ。特に金持ってる奴」など、欲望全開な叫びが響きつつ、滞りなく討伐は完了した。
「ったく、君がエンディング見なけりゃあ、わざわざんな寒空でんな格好で戦う事もなかったろうに。しっかし、似合わねーなあその服」
「うっさいある。つーかそもそもコール、おめさんがんな仕事もてくるからだな! あと人のコト言えんネ。何その恰好、テロあるか、精神汚染テロあるね」
「精神汚染? そっちは精神汚濁じゃあねーか! 見てるこっちがクレイジーになっちまうっつーの!」
などと言いつつ、金をとりに戻る二人でありました。
「……ちっ、こういうエンディングになる事は、見えなかったのかよ」
戻って報酬と、カップルからせしめたケーキ代を……と思ったら。
バイト先の上司が、カップルから訴えを聞き、二人はあっさりクビ。手に入るはずのケーキ代とバイト代は、客への慰謝料他色々な理由から支払われず。
「ほんと、世の中不条理あるね」と、不条理に金をせしめようとしたビリーはつぶやいた。
「……今宵の夜空は、金貨が降るよに見えるあるのに、なんでワタシにはツキが無いか? こんな夜には、誰にもツキの一つや二つ、懐に舞い込んできそう思わんカネ?」
「……まあ、そう言うな。ほれ」
コールが、ビリーへと酒瓶を差し出した。
「一本いただいて来たぜ。こいつをかっくらって、祭りに繰り出そうじゃあねーか」
「……ま、いいある。たまには付き合ってやるあるよろし」
などと言いつつ、二人は溶け込んでいくのでありました。お祭りで賑わう街中に。