■クロノス大祭『仮装大会 in 鷹の森〜宣伝部長&副部長の仮装〜』
「なぁ……」「はい」
「どうしてこうなった」そんな風に頭を抱えているのは、旅団『鷹の森』の団長であるレグルスと、最年長男子であるアレスだ。
旅団のみんなに囃し立てられ、なぜか旅団宣伝のために仮装する羽目になったのだ。
その場の空気と旅団員達の強い押しに負けて承諾したものの、いざ衣装を前にすると軽率な自分への後悔しか出てこない。
……とはいえ、二人とも着替えているうちに楽しくなってきて、最終的にはノリノリで『サンタ仮面』と、『彼に憧れる女子』に扮するのだったが。
――もう、本っ当にノリノリである。
レグスルに至っては、衣装にマント、怪しげな仮面を着けて塀の上から登場。
「はーっはっは! 私はサンタ仮面! 子供に夢とプレゼントを与えにやってきた!」
などと言いながら、プレゼントの詰まった大きな袋を掲げて大見得を切る。
アレスの方も負けていない。
純白のドレスに身を包み、ウィッグをつけて……。
「……あ、あれが噂のサンタ仮面――!」
などとオーバーリアクション。
とはいえ、レグルスほど『なりきって』いないのか、裏声で叫ぶアレスの頬は赤く染まっている。
『カッコいいヒーローに憧れる少女』という演技ではなく、単純に照れているのだ。
マジ照れである。
そうして――すっかりヒーローになっていたレグルスも、そんなアレスの様子を見て気付くのだ。
自分達が失ったものの大きさに……。
不意に我に返ったアレスとレグルスは、己の行動に照れて恥ずかしそうにしながら『舞台』を退散する。
「……どうして、こうなった……」
「すみません、アレスさん……。僕にもわかりません……」
劇場から逃走した二人に残るのは、「なんということをしてしまったのだろう」という後悔の念だけ。
『顔から火が出る』という感情を、身をもって理解してしまった、アレスとレグルスなのだった。
今回の『劇』について、二人は旅団の面々から色々とからかわれる羽目になるのだが――。
それはまた、別のお話。