■クロノス大祭『Chronos in Wonderland』
ラッドシティに訪れる不思議。街には金色の砂と純白の雪が降り注ぎ、中心にある巨大時計から愉快で華やかな音楽が流れ出す。
巨大時計だけではなく、ラッドシティ中の時計塔が不思議に変化する。
時の星霊クロノスの名を戴いたクロノス大祭。
「クロノス大祭か……星霊クロノス……まだ呼べぬのじゃ……」
星霊術士であるロザリンドがティーカップに口をつけながら呟いた。
「焦らずとも良いじゃろ。すぐに召喚できるようになろう」
マグノリアが口を開いて、ティーカップに口をつける。
エプロンドレスを着た2人の少女の優雅なティータイム。
「あれは……」
ふと窓の外を見たロザリンドが目をぱちぱちと瞬かせた。
「どうしたのじゃ?」
何かあったのかと、ロザリンドの視線の方向をマグノリアも見る。
「お?」
窓の外には金砂と共にまるで輝きながら降っているような雪と、大きな懐中時計を持った白兎――星霊クロノス。
忙しそうに時計を見ながら走っていた。時計塔に起こる不思議を与えているところなのだろうか。
「あやつを捕まえれば、それがしもクロノスを召喚できるようになるじゃろか」
ロザリンドがにやりと不適な笑みを浮かべた。
「本当に『すぐ』召喚できるようになるかもしれぬのぅ」
マグノリアもにやりと口元を笑みの形に歪める。
カタン――。
2人同時にティーカップをソーサーの上に置くと、それが合図のように表に飛び出した。
「待つのじゃ、そこなクロノス!」
ロザリンドが声をかけるが、クロノスはその声が聞こえていないかのように、時計を見つめ、走るスピードを落とそうとしない。
「むむ……それがしを無視するとは、いい度胸じゃ」
言葉とは裏腹にロザリンドの顔は何処か楽しそうだ。そして、口元に浮かぶ不敵な笑みをマグノリアは見逃さない。
「では、追いかけて捕まえるというのはどうじゃ?」
マグノリアは楽しげに提案する。
「当然ぞなもし」
更に不敵な笑みを深めたロザリンド。二人は無言で見つめ合って、同時ににやり。
「それがしに召喚されるようになるのじゃー!」
「待つのじゃクロノス〜!」