■クロノス大祭『せいなる夜のシスターサンタ』
クロノス大祭の夜。2人の人影が月夜を舞う。天啓を授かったという赤い改造シスター服を纏い、赤い帽子を被ったベルと、大きな袋を担いだツカサだ。
ツカサの担ぐ大きな袋の中身は、良い子へのプレゼントが沢山詰まっている。
(「去年のこの日も似たようなことをしてた気が……」)
ツカサがふとそんな事を思い出しながらベルの手を引いて先導していた。
(「相手がいないんじゃないんです。シスターとしての大事なお役目なのです。決して相手がいないわけじゃ……」)
去年、お互いに旦那様と結ばれて、4人でパーティを! と意気込んでいたような気がするが、きっと気のせい。あの時はお酒飲んでたし。
「?」
何か難しい顔をしているツカサの表情に、どうしたのかとベルが首をかしげる。
「いやいや、ささっ、お仕事しましょう♪」
そんなベルに気付いたツカサが、にこっといつもの笑顔を向けた。
「寒いけど今年もがんばろー♪」
ツカサの笑顔に安心して、ベルも笑顔で気合を入れる。
ツカサの担ぐ袋の中身が随分少なくなってきた頃――。
「みんなの喜ぶ顔が目に浮かびますねー」
先程、ほんの少しだけ沈みかけていたのが嘘のように充実した満足げな笑顔を浮かべるツカサ。
「起きたら、びっくりするだろーな」
ベルは自分たちがこっそり枕元に置いたプレゼントを見つけた子供たちを想像する。びっくりして、まずは両親に何なのか聞くだろうか。それとも、先に中身を確認するだろうか。
「ふふ、喜んでくれるといいですねー」
どちらにせよ、きっと瞳をキラキラ輝かせて喜んでくれるに違いない。神様からの贈り物を。
ベルと同じく驚く子供たちを想像して顔を綻ばせるツカサ。
「終わったら、のんびり楽しみたいねー」
「いいお酒ありますよー」
充実しているし楽しいのだが、やはり寒いし少し疲れたのか、ベルが笑顔のまま言うと、ツカサが得意げな笑みを広げた。
「いいねいいねー」
「今年は10年物の白もあるから、頑張りましょっ、ねっ?」
――月夜を駆けるシスターサンタの会話は良い子には内緒ですよ♪